初期ウルトラマンシリーズの脚本を、故金城哲夫さんと共に手掛けた那覇市出身の上原正三さん(80)が自伝的小説「キジムナーkids」(現代書館)を出版した。今年の「慰霊の日」に

▼沖縄戦から2年後の旧玉城村百名を舞台に、5人の少年が駆け回る物語。どうすれば食べ物にありつけるかと知恵を出し合い、米軍基地に潜り込んで戦果を上げる冒険劇だ

▼5人はたくましく、底抜けに明るい。だが、いずれも戦争の傷を負っている。片腕をなくした者、言葉を失った者、森の中の秘密基地で日曜日の夜だけ一人過ごす者…。次第に一人一人の過去と今が明かされる

▼上原さんが若いころに書いた沖縄は、戦争や基地を直接的に問う作品が多かった。大半は「政治的」との理由でドラマ化されず、子ども番組の世界へ。時にウルトラシリーズの中で単純な善悪二元論、付和雷同の恐ろしさなどを描いた

▼今回の本は「大人の童話」と語る。「沖縄戦の悲惨さだけでなく、人々が絶望からどう立ち上がったのか、子どもの目線で書きたかった」

▼あるのは米軍の掟(おきて)だけという戦後の混乱に翻弄(ほんろう)されながら、自然や先祖を崇拝する心、文化を守り抜いた。「だから己を見失わなかった。沖縄の混乱は今も続くが、ウチナーンチュのバイタリティーはそんなにヤワではない」とのメッセージを感じる。(磯野直)