電気自動車(EV)向けの充電インフラが急速に広がっている。EVは走行中に排ガスを出さず、次世代エコカーの代表格として注目されるが、充電場所の少なさが普及のネックになっていた。環境性能が高い車を増やしたい政府も、補助制度で充電器の設置を後押しする考えだ。充電インフラの拡充が順調に続けば、EVが本格的な普及期に入る環境が整うことになる。

国道58号沿いに設けられたEV用充電器を使用するユーザー=浦添市の琉球日産

国道58号沿いに設けられたEV用充電器を使用するユーザー=浦添市の琉球日産

■コンビニ、高速、観光施設…計画前倒し

 充電して電気モーターで動くEVは、走行音が静かで、環境に悪影響を与える窒素酸化物(NOx)や温室効果ガスなどを排出しないのが特長だ。しかし、ガソリン車に比べると走行可能距離が短いため、充電場所が少なければドライバーは安心して運転することができない。

 充電器には、約30分でほぼフル充電にできる急速充電器と、約8時間かかる普通充電器の2種類がある。一般的な設備購入や設置工事のコストは、急速充電器が数百万円規模、普通充電器が数十万円規模とされる。

 経済産業省は「EVなどの普及には充電インフラの強化が欠かせない」(自動車課)と指摘。ガス欠ならぬ「電欠なき日本」の実現を目指し、関連費用の3分の2などを補助している。2012年度補正予算では、「次世代自動車充電インフラ整備促進事業」として計1005億円を計上し、14年度補正予算で300億円を追加した。

 経産省によると、急速充電器は14年12月1日時点で全国に2871台ある。その2年前は1381台、1年前は1759台だったが、政府による補助の効果で大幅な増加が続いている。政府は20年に急速充電器を5000台に増やす目標を掲げているが、前倒しでの達成が確実だ。普通充電器は、補助を受ければ10万円を切る金額で家庭に設置できるケースもあり、14年度末には4万台に達するとの推計もある。

 EVで来店した客が買い物をしている間に充電できるよう、コンビニエンスストアやショッピングセンターなどへの設置も進む。比較的長い距離を運転するドライバー向けに、道の駅や高速道路のサービスエリア、観光施設などでの導入も増えてきた。

■高速料金を補助

 経産省は5月から12月までの間、EVなど4万台を対象に、高速道路の利用料金の一部を補助する。補助を受けたドライバーから高速道路の利用情報を提供してもらい、充電器の効率的な配置につなげる。首都高速道路などは対象外で、補助総額は6万円と制限はあるが、ドライバーの利便性向上につながりそうだ。

 経産省外郭団体の次世代自動車振興センターは「EV充電器は、限られたスペースに比較的手軽に設置できるのが強みだ」と話しており、今後も充電スポットは広がるとみられる。

 政府が策定した「自動車産業戦略2014」は、EVなど充電式の車を、30年時点で新車販売全体の20~30%まで普及させる目標を掲げた。運輸部門の温室ガス排出量を削減したり、ほぼ全量を輸入している石油資源への依存度を低減したりするのが狙いだ。

 三菱自動車は09年7月に軽自動車がベースの「アイ・ミーブ」を発売し、10年12月には日産自動車が普通車サイズの「リーフ」を投入した。累計国内販売台数(15年1月末)は、アイ・ミーブが1万500台、リーフが5万台となっている。

 リーフの場合、フル充電で約228㌔走ることができる。自宅に普通充電器があれば、車庫に置いている間に充電することも可能だ。電気代が割安な夜間に充電した場合、一般的なガソリン車よりも走行コストを低く抑えられる。日産は「毎日の通勤・通学で、例えば片道20キロほど走行する場合、EVは経済的に大きなメリットがある」と説明している。

■FCBにも注目

 次世代車の中では、タンクに詰めた水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気をつくって走行する燃料電池車(FCV)も最近注目を集めている。トヨタ自動車が14年12月に「ミライ」を発売し、ホンダは16年3月に販売を開始する計画だ。日産も17年の市販化を目指す。

 ミライの水素注入時間は1回約3分と、EVより格段に短い。満タンにすれば約650㌔と長距離を走行できるのも利点だ。

 政府は15年度中に水素ステーションを全国で100カ所にすることを目指しているが、水素ステーションの建設には1カ所当たり4~5億円の費用が掛かる。ガソリンスタンドを運営する石油元売り大手などが参入に名乗りを上げているが、現時点では整備のハードルはまだ高い。

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