打ち上げ花火のように次から次に新語、造語が飛び出す。何を議論しているのか、正直、よく分からない。統一地方選を意識して重要な論点を先送りし、わずか1カ月余りで結論をまとめる。国の行く末を左右する安全保障法制の大がかりな変更であるにもかかわらず、国会論議は空回り気味。こんな形で安保政策の大転換が図られていいわけがない。

 自民、公明両党は20日、自衛隊の活動領域を大幅に拡大させるための「安全保障法制整備の具体的な方向性」について、正式に合意した。5月中旬の国会提出を目指すという。

 与党の共同文書は、新たな法整備が必要な分野として(1)武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処(2)他国軍支援のための周辺事態法の改正(3)自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法の新設(4)国連平和維持活動(PKO)協力法の改正(5)集団的自衛権の行使-の5分野を挙げている。

 なぜ今、安保法制の全面刷新なのか。なぜ今、自衛隊を海外に出して武力行使を可能にするのか。そもそも安倍政権は、遠い海外で、誰のために、何をしようとしているのか。そういう基本的な問題について、国民の間に共通理解ができているとは言い難い。

 与党協議では「周辺事態」「グレーゾーン事態」に始まって、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」「存立事態」「重要影響事態」「緊急対処事態」などの新語、造語が飛び交った。何が何だか、ちんぷんかんぷんだ。

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 過去の政権が自衛隊の海外派遣について抑制的に対処してきたのは、憲法9条の下で集団的自衛権の行使を「憲法に反する」として認めてこなかったからだ。

 安倍政権は昨年7月、閣議決定によって憲法解釈を変更した。憲法に照らして「使えない」はずのものを一片の閣議決定によって「使える」ようにし、その前提で今回、自衛隊の海外派遣の枠組みを大幅に拡大したのである。

 周辺事態法を改正して地理的制約を外し、戦闘する米軍の後方支援を地球規模に広げる考えだ。

 周辺事態法の改正には合意したものの、「周辺事態」に代わる新たな「重要影響事態」が具体的にどのような事態を想定しているのかは明らかになっていない。

 海外派遣の際の国会の事前承認や、集団的自衛権の行使に絡む「武力行使の新3要件」の位置付けけなどは合意に至らず、先送りされた。

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 日本人は自らが当事者になる戦争や戦闘に耐えられるのだろうか。安保法制の全面刷新が指し示す未来は、そのようなものである。国民不在の政策転換が極めて危険なのは、戦後日本の原点が根底から覆されることが予想されるからだ。

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 [訂正]17日付の本欄で沖縄戦の防衛隊について「兵役にもれた男性が対象」とあるのは誤りで、当時は現役を離れた予備役の在郷軍人などが召集されました。「兵役にもれた」という表現を削除し、訂正します。