先日の雨は暖かく、季節の変わり目を実感した。最近は日中の気温は20度を超え、歩けば軽く汗ばむほど。初夏を思わせる日々で、風も心地よい

▼きょうは春分の日。よく言われる「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉通りの天候になっている。通勤途中で、道路の縁石の隙間から名も知らぬ草が顔を出し、小さな花を付けているのを見つけた。命の息吹があふれている

▼日本本土で春を告げる風物詩の一つが「春一番」。立春から春分までの間に吹く強風だが、関東や東海、近畿、九州南部は今年は記録されていない。低気圧が発達せず、風が強まらなかったためだという

▼沖縄で、この季節に吹く強風を「ニンガチカジマーイ」と呼ぶ。天候が急変しやすく、海が荒れ、漁師泣かせといわれる。風が気まぐれなのも春の特徴だ

▼暖かな雨が降った19日、叔母が97歳で亡くなった。安らかな顔の頬をさすりながら、寒さが遠ざかった時季に他界したことがせめてもの救いだと思った。台湾で生まれ育った。先の大戦で夫が戦死、沖縄に引き揚げ、洋裁で生計を立て一人娘を育て上げた

▼おしゃれな人で、焼いてくれたシュークリームは絶品だった。きょうの午後に荼毘(だび)に付される叔母の人生は戦争で一変したといえる。沖縄の多くの女性が同じように戦争に翻弄(ほんろう)されながら、戦後を生き抜いた。(与那原良彦)