時に手の震えと格闘しながら筆を握る。納得できる作品を目指して前へ進もうとする姿勢は若いころと変わらない。

 那覇市に住む吉田英子さん(93)は、第67回沖展の最高齢入選者だ。

 「毛筆の年賀状」に憧れて書を始めたのは60歳の時。以来30年余り、紙とすずりに向かい、沖展をはじめいくつもの公募展で入選を重ねる。

 「昔は一日中部屋にこもって集中して書いていましたが、今は長く座っていられないので、立ったまま書いたりするんです」

 週に4日デイサービスに通う現在も、日に2時間はけいこにいそしむ。月に2回は師である豊平峰雲さんの元を訪ね、作品を見てもらう。

 夫の介護や自身の病で続けるのが困難な時期もあったが、「書に助けられることも多く」、思いを形にする喜びが創作の原動力になった。

 行書や草書を得意とし、サトウハチローの詩などを素材にした近代詩文も好んでしたためる。

 今回、入選した作品は漢詩「鄭山啓に簡す 外一首」。「線質が優しく優雅」というのが豊平さんの評だ。

 県内最大の美術・工芸公募展「第67回沖展」が浦添市民体育館で開かれている。

 展示されているのは絵画、版画、彫刻、グラフィックデザイン、書芸、写真、工芸分野の825点。

 展示数が最も多い書芸部門は、若い人から吉田さんのようなシニア世代まですそ野が広い。いずれも作者の息遣いが感じられる力作がそろう。

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 市民美術展として長く親しまれる沖展は、多様なジャンルの作品が体育館に並ぶ総合展であることと、沖縄の伝統文化や暮らしに根ざした地域性豊かな作品が多いことが特徴だ。

 まず入り口を入ると絵画作品が出迎えてくれる。具象画、抽象画、現代アートなど多彩。沖展賞を受賞した北山千雅子さんの「2014」は鮮やかな色彩が人を引きつけ、想像力をかきたてる。

 彫刻やグラフィックデザイン部門は内容も充実し、若手の活躍も目立った。

 表現するということは、自分自身と向き合う作業である。

 ここ何年か、米軍普天間飛行場の移設問題を扱った作品を多く目にする。基地や沖縄戦をテーマにした作品も沖展の特徴で、そこにはアートを通した問い掛けがある。

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 沖展は1949年、沖縄タイムス社の創刊1周年記念事業として始まった。戦争による荒廃と戦後の混乱の中で、人々は「心を満たす」芸術文化を渇望していたのだ。

 当時は鑑賞に適した施設がなく、しばらくは那覇市内の学校を転々。ここ浦添に移ったのは第40回展からで、以来、大きな空間で作品全体が見渡せるようになった。

 壁を埋めつくし、フロアいっぱいに並ぶ作品の数々を、自分なりに想像力を働かせ、また家族で語らいながら鑑賞してほしい。

 沖展の「伝統」と、沖縄の芸術文化の「今」が見えるはずだ。