沖縄総合事務局財務部は、7月期の管内経済情勢報告で景気の基調判断を引き上げ、「拡大している」という強い表現に改めた。

 前回4月期は「着実に回復している」という判断だった。景気の局面を表現するのに「拡大」という言葉を使うのは、バブル景気真っただ中の1991年9月期以来、約26年ぶりである。

 80年代後半から90年代初頭のバブル期に「総じて拡大している」という表現が使われたことがあるが、7月期の「拡大している」という表現はそれを上回る。

 けん引役の観光は、入域観光客数が44カ月連続で単月の過去最高を記録するなど拡大基調が鮮明である。個人消費は百貨店やスーパー、コンビニの販売額が堅調に推移し、「緩やかに拡大している」という。

 雇用情勢も、有効求人倍率が復帰後の過去最高値を3カ月連続で更新するなど、目に見えて改善している。

 土地高騰に象徴されるかつてのバブル景気と異なるのは、実体経済が活発だという点だ。

 「回復」から「拡大」へ。新たな局面に入った県経済で目立つようになったのは明と暗のくっきりした差である。 さまざまな経済指標が改善基調にあるというのに、県内では景気の「拡大」を実感できない人が多い。物価や教育費、医療費支出などに比べ賃金の底上げが進んでいないからだ。経済の好循環を維持するためには、沖縄の低賃金構造と生産性の低さにメスを入れる必要がある。

■    ■

 県内の労働市場は「買い手市場」から「売り手市場」に変わった。ホテル業、建設業、飲食業などの人手不足は依然として深刻だ。

 時給をアップするか、レジの無人化を図って省力化を進めるか、他部門の職員に応援してもらうか。企業の対応はさまざまだが、労働力需給がさらにひっ迫してくれば、その場しのぎの対応は行き詰まる。

 将来を見すえた「人への投資」を重視すべきである。

 「人への投資」には、いろいろな方法がある。給与を上げることだけでなく、労働時間を短縮したり、子育てに配慮したり…。

 資本力の弱い中小零細企業が大部分を占める沖縄で、低賃金構造を改めるのは容易でない。だが、この問題に手をつけなければ、県内で景気拡大の恩恵を受けるのは一部にとどまらざるを得ないだろう。

 政治を通しての分断と、経済を通しての格差。この分断と格差を解消しなければ経済の持続的な成長は望めない。

■    ■

 低賃金構造を改めるには最低賃金の引き上げ、正規雇用への転換、不合理な待遇差の改善、景気拡大に見合った賃上げ努力、大学進学率を高めること、技術職や専門職の育成などの試みが重要だ。

 低賃金構造を改善することで、離職率の高さにもブレーキをかけることができるのではないか。職場環境が改善され、従業員が気持ちよく働くようになれば、生産性も高まるはずである。