沖縄県内での創業や起業を支援する「スタートアップカフェコザ」(中村まこと代表)が8月5日、オープンから1周年を迎えた。年間利用者は1万2千人、相談件数は200件を超え、24人が実際に起業している。

 中村代表とスタートアップカフェ福岡に関わる富田雅志課長(福岡市経済観光文化局創業・立地推進部)に、スタートアップカフェ設立前後の状況や今後の見通しを聞いた。

創業・起業のワンストップ窓口になるスタートアップカフェコザ

 

◆社会の問題解決へ、沖縄が日本を支える

 スタートアップってなんでしょう? その最初の質問にスタートアップカフェコザの中村まこと代表は「急速に変化する社会の問題を解決すること。これが全て」と明言する。「今は世界がステージ。東京だからうまくいく。そんな時代ではなくなった」と続け、日本(日本経済)を支えることのできるスタートアップが沖縄から誕生すると目を輝かせる。

 少し寂しげな沖縄市の商店街の一角にスタートアップカフェコザはある。ガラス張りの入り口に吹き抜けの空間、モダンな色使いのおしゃれな雰囲気が特徴だ。何も知らなければ、創業・起業のワンストップ窓口とは気づかないだろう。県内外、国外からIT関連のプログラマーやエンジニアらが気軽に立ち寄り、起業希望者に知恵や技術を提供する場となっている。

スタートアップカフェコザの中村まこと代表
今日もスタートアップカフェコザでは打ち合わせが始まる

 1階はワンストップ相談窓口と無料のコワーキングスペースだ。2階は3Dプリンターやモーションキャプチャー、AR・VRなど機材をそろえた有料のコワーキングスペースと人材教育の場だ。世界中を旅しながら、沖縄のここで仕事をする外国人も多い。中村代表は「沖縄の人が沖縄の価値をしっかり認識することで、事業はより拡大できる」と見ている。

 沖縄のスタートアップのメリットに、①シンガポールや中国などアジアに近い地位的優位性②多くの移民を輩出してきた県民気質③実証実験に適した規模―の3点を挙げる。LCCとインターネットの発達で、①はさらに加速しているという。②は沖縄から外に出るなら、東京でも外国でも一緒という沖縄県民の気概と思考を示している。そして③。インフラが整い人口140万の沖縄は、IOTやAI、ブロックチェーンなど社会に密着した実証実験に適した規模だと話す。「急速に変化する社会の問題を解決する」ために世界中から研究と投資が集まる場になると話す。

「東京からの注目度も高い」と話す中村代表

 自走化も目標だ。行政の補助が終了するまでに起業・創業ワンストップ窓口を軌道に乗せるべく、ITスキル教育・ニアショア人材の育成に力を注ぐ。「人の集積が金も研究も呼び込む」が中村代表の考えだ。2カ月間みっちり学ぶプログラミングスクールは現在5期生が受講中。プログラミングの技術習得にとどまらないように、実践を織り交ぜて行っている。スタートアップカフェコザと福岡と大阪。この3拠点の連携を生みたいと話す。2年目に向けての挑戦が始まる。

◆市役所窓口からカフェへ。反響の差に驚き

 「若い人からは『行政は何もしてくれない』と声があった」―。福岡市創業・立地推進部の富田雅志課長は、スタートアップカフェ福岡がオープンする以前の状況を振り返る。

スタートアップカフェ福岡の取り組みを語る富田課長

 もちろん、創業に関する相談窓口は市役所内にあったが、敷居が高い・準備するものが多い・平日しか受け付けていないなどの理由で若者が相談に来ることは少なく、年間300件どまり。どうすれば相談件数は増加するのか。どうしたら若者が来てくれるか。その答えの一つが、誰もがふらっと入れる「カフェ」という形式だった。起業したい人と応援する人が、気軽に集まり交流できる場を生み出すため、場所の選定から運営まで民間に任せ、行政はコンセプトを示すだけだ。

 公募の結果、運営団体がカルチュア・コンビニエンス・クラブ九州カンパニーに決定し、2014年10月に「TSUTAYA BOOK STORE TENJIN」の3階フロアにスタートアップカフェ福岡はオープンした。その反響は大きく、年間の相談件数は約1500~1800件に倍増。富田課長は「立地の良さと常駐するコンシェルジュ、平日も22時まで対応できる窓口の存在が大きかった」と話す。認知度も向上し、「アクセラレーションやデモデーなどの用語も、ようやく一般化した」と笑う。この2年半で相談件数は4500件を突破し、100社が事業化した。セミナーは686本と月20本のハイペースだ。

 ことし4月には、福岡市内の旧大名小学校にスタートアップカフェを移転。市内3カ所にあるインキュベーション施設も集約し、起業後の育成や既存の企業の第二創業にも取り組む。「見える化が進み、化学反応が生まれる」と期待する。

 沖縄のスタートアップ事業やベンチャー企業にも興味津々だ。アジアを視野に入れる沖縄と同じく、福岡は韓国や中国を意識したベンチャー企業も多く、特にインバウンド・観光方面での情報共有に意欲をみせた。(沖縄タイムスデジタル部・村井規儀)

スタートアップカフェコザ

 「起業したいけど、どうすればいいの…?」と悩みを抱える人たちに、コンシェルジュが法務・税務・資金調達などさまざまな方面で相談に応じ、

士業・金融の専門家につなげて開業までワンストップで支える窓口。16年に沖縄市が内閣府「地方創生加速化交付金」(約8千万円)を活用して始める。

【1周年イベント告知】

 8月5日のスタートアップカフェコザ1周年記念イベント「弥勒世果報」では、沖縄市内6会場で22のトークセッションやレセプションを行う。

福岡、大阪、コザの3つのスタートアップカフェ担当者が初めて集う「スタートアップカフェがもたらす地方活性」や子育て中の母親の働き方を模索する

「ワーキングマザープロジェクト」、食とテクノロジーの関係を考える「フード・スタートアップの未来」など多様な業種と幅広い世代を対象にしている。

当日のプログラムや登壇者はこちらから→http://proximo.okinawa/