県の対抗措置に、政府が間髪を入れず反撃に出た。名護市辺野古の新基地建設をめぐって、県と政府が司法の場で正面から争う構図が鮮明になりつつある。

 翁長雄志知事は23日、海底面を変更するすべての海上作業を7日以内に停止するよう、漁業調整規則に基づいて沖縄防衛局に指示した。許可条件に反している可能性が高いと判断したからだ。

 これに対し、沖縄防衛局は翌24日、「停止指示は違法」だとして行政不服審査法に基づき、指示を取り消すよう農林水産相に審査請求した。

 県は、指示に従わなければ埋め立てに必要な岩礁破砕許可を取り消す構えだが、防衛局は裁決が出るまでの執行停止を申し立てている。

 国の埋め立て工事が進まないことを理由に、当事者の防衛省が農林水産相に不服審査を申し立てるのは、結果が丸見えの猿芝居を見ているようなものだ。公平・公正な審議が保障されるとは思えない。

 東村高江のヘリパッド建設をめぐって沖縄防衛局が起こした通行妨害禁止の訴訟は、反対運動の威嚇、沈静化を目的とした「スラップ(SLAPP)訴訟」だと批判を浴びた。あの手法を思い起こさせるやり方である。

 前知事から「埋め立て承認」や、埋め立てに必要な「岩礁破砕の許可」を得ているのは事実である。

 だが、法的な手続きを踏んだからといって、地元自治体を無視して一方的に事を進めていいわけがない。手続きの形式面さえ整っていれば何をやっても許されると考えるのは間違いである。

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 安倍政権は2013年4月28日、県民の反対を押し切って「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を開いた。

 政治評論家の田崎史郎さんは著書で、式典を開くかどうかをめぐって安倍官邸の正副長官会議で「激論が交わされた」ことを、参加者の発言を紹介しながら明らかにしている(「安倍官邸の正体」)。

 慎重論、積極論が飛び交う中で、最後は菅義偉官房長官が議論をまとめ、安倍晋三首相が同調する形で開催が決まったという。

 式典開催をめぐる政策決定過程の、ほんのわずかな部分に触れただけではあるが、辺野古埋め立て工事と共通する安倍政権のメンタリティーを感じざるを得ない。

 一言で言えば、安倍首相や菅官房長官には、沖縄の人々が歩んだ苦難の戦後史を内在的に理解し、沖縄の人々の思いに寄り添う、という気持ちが欠けているように見える。

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 復帰前、沖縄では軍事政策がすべてに優先され、県民の基本的人権や自治権は大きな制約を受けた。

 施政権が返還されて今年で43年になるというのに、米軍優先の地位協定によって沖縄の人々の主権者としての権利は各面で著しい制約を受けている。普天間飛行場を辺野古に移設してもこの負担は変わらない。民意に反して基地建設を強要されるのは、人間としての尊厳を脅かされるのに等しい。その事実に謙虚に向き合うことが、問題解決へのスタートラインである。