2017年(平成29年) 8月24日

タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

木村草太の憲法の新手(61)「ブラック部活動」 法の支配徹底されぬ学校

木村 草太
木村 草太(きむら そうた)
憲法学者/首都大学東京教授  

 1980年横浜市生まれ。2003年東京大学法学部卒業し、同年から同大学法学政治学研究科助手。2006年首都大学東京准教授、16年から教授。法科大学院の講義をまとめた「憲法の急所」(羽鳥書店)は「東京大学生協で最も売れている本」「全法科大学院生必読書」と話題となった。主な著書に「憲法の創造力」(NHK出版新書)「テレビが伝えない憲法の話」(PHP新書)「未完の憲法」(奥平康弘氏と共著、潮出版社)など。
ブログは「木村草太の力戦憲法」http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr
ツイッターは@SotaKimura

 子どもの安全の観点から学校生活上のリスクを分析してきた内田良氏の新著『ブラック部活動』を読んだ。

 日本の学校では、多くの中学生・高校生が部活動に参加している。顧問・指導は、その学校の教員が担うことが多い。部活動には、学校という身近な場所を使って、低額で文化活動やスポーツに参加できるメリットがある。しかし、内田氏によれば、さまざまな負の側面がある。

 まず大きいのは、教員の過重負担だ。特に運動部は、平日の早朝から夜遅くまで練習し、週末は大会や対外試合に参加するところも少なくない。部活動が原因で、いわゆる過労死ラインを超える超過勤務となることもある。

 もちろん、教員が真に自主的に取り組んでいるのであれば、それもよいだろう。しかし、「全員顧問制」の慣例など、校長らから顧問を事実上強制されることも多い。

 また、子どもの負担も深刻だ。学校は基本的に、教育課程活動のための組織だ。教育課程とは、学校教育の目的を達成するために、学校の教育計画に基づいて行われるものを言う。学習指導要領に基づく、国語や数学などの教科の授業がその典型例だ。他方、部活動は教育課程外活動だ。例えば、中学校学習指導要領は、生徒が自主的・自発的に行う活動にすぎないとする(第1章総則第5)。

 にもかかわらず、全生徒に部活参加を強制する学校がある。あるいは、建前は任意でも、内申点を気にして、いやいやながら部活動に参加する子どもや、参加を強制する保護者も多い。任意に参加した部活でも、部活をやめないよう顧問や友人から圧力を受けたり、常軌を逸した指導や体罰で生命や身体の危機を招いたり、というケースもある。

 内田氏は、こうした状況を改善するため、「ゆとり部活動」への移行を提唱している。具体的には、「活動は週2~3日までで、週末は禁止」などの時間の総量規制を導入し、教員も生徒も参加を任意にするとの提案だ。

 私は、内田氏の問題提起を読み、学校における法の支配の不徹底を改めて感じた。内田氏が指摘する通り、部活動は教育課程外活動であり、しかも、その活動時間の大部分が勤務時間外に行われるため、部活動の指導を教員に命じることは違法だ。

 それにもかかわらず、学校現場では、「顧問・指導の負担は当然」との慣行により、ほとんどの教員、あるいは教職員の労働組合は、部活動における違法性を除去するための活動を十分にやってこなかった。校長ら管理職も、教育委員会や文部科学省も、部活動に起因する超過勤務を是正できていない。

 自分自身の権利も守れない教員が、生徒の権利を正しく認識し、それを尊重できるだろうか。生徒の教育を受ける権利に応え、適切な学習環境を提供できるだろうか。体罰やハラスメントとなる指導をやめられるだろうか。

 大切な子どもたちを預かる教員には、権利の主張はわがままではなく、人が人らしく生きるために必須であることを理解してほしい。子どもたちの権利のためにも、教員自身の手によって、ブラック部活動の問題を一刻も早く解決しなくてはならない。(首都大学東京教授、憲法学者)

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