大型コンクリートブロックによって損傷したのは海底のサンゴ礁だけではない。

 県による潜水調査の要請や工事中断の申し入れはことごとく拒否され、選挙で示された沖縄の多数の声は無視され、沖縄の人々の海への愛着や過酷な歴史を切り開いてきた人としての誇りまで押しつぶされようとしている。

 大型コンクリートブロックは今や、巨大な「理不尽の塊」と化しつつある。

 名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志知事は23日、県漁業調整規則に基づく岩礁破砕の許可権限を根拠に、すべての海上作業を30日までに停止するよう沖縄防衛局に指示した。

 大型コンクリートブロックがサンゴ礁を損傷しており、「許可を得ずに岩礁が破砕された蓋然(がいぜん)性が高い」と判断したからだ。

 防衛局は翌24日、すかさず指示取り消しを求める審査請求書と、指示の執行停止を求める申立書を林芳正農水相に提出した。行政不服審査法に基づく対抗措置である。

 県は27日、防衛局が出した執行停止申立書に対する反論の意見書を林農水相に提出。同日夕、翁長知事が急きょ県庁で記者会見し、長文の知事コメントを発表した。

 防衛局の不服申し立ての不当性を具体的に明らかにしつつ、戦後70年に及ぶ米軍基地の沖縄集中に触れ、「(安全保障の負担は)沖縄県民だけが背負うのではなく、日本国民全体で考えるべき」だと主張する。沖縄の多くの声を代弁する情理を尽くしたコメントである。

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 だが、27日に知事の意見書を農水相に提出したばかりだというのに、28日には、複数の全国紙が、林農水相が翁長知事の作業停止指示の効力を止める意向を固めた、と朝刊で報じた。私たちは26日付の本欄で防衛局の不服申し立てについて「結果が丸見え」だと批判したが、どうやらそういうことになりそうなのだ。

 林農水相が週明けの30日、知事の停止指示の効力を止める判断を下した場合、防衛局は辺野古での海上作業を継続することになる。

 法定受託事務である岩礁破砕の許可について、国が県の処理の仕方を違法だと言うのであれば、地方自治法に基づいて是正措置を取るのが筋ではないのか。

 不服申し立て制度は、国民に対して広く行政庁に対する不服申し立ての道を開くことを目的にしており、「国自体が不服申し立てを行うことが予定されていない」(知事コメント)。

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 国内外の環境保護NGOなど31団体は25日、移設関連作業の中止を求める共同声明を発表した。一連の作業によって絶滅危惧種のジュゴンの行動にも影響が出始めている、と環境保護団体は指摘する。

 政府と県の対立を危惧する声は国内だけでなく、米議会周辺でも広がりつつある。

 この問題は安全保障の論理だけでは解決しない。公平・公正、法の下の平等、環境保全という普遍的価値、沖縄の戦争・戦後体験、過去の清算など、広い視点からのアプローチが必要だ。