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  • 米軍の圧政と闘った沖縄の政治家、瀬長亀次郎さんが人形に
  • ゆるキャラ風で、辺野古新基地に抗議する市民を癒やしている
  • 那覇市の「不屈館」で販売中。これまで計560体が売れた

 黒縁メガネに鋭い眼光、角張ったアゴ。高さ6センチ、幅5センチの頑固そうな人形が、抗議船「不屈」の運転室にドンと腰を下ろす。新基地建設をめぐり、政府と市民が激しく対立する名護市辺野古の海上。人形は両面テープで固定され、荒波にも微動だにしない。

ハチマキを締め、プラカードを掲げ、三線を弾きながら座り込みを続ける「瀬長くん」=那覇市若狭・「不屈館」

 「緊張感の漂う海。これを見るたびに励まされたり、ほのぼのした気持ちになったりします」。不屈の船長で、牧師の金井創さん(60)=南城市=は話す。

 人形の名は「瀬長くん」。米軍占領下の圧政と闘った政治家、瀬長亀次郎さん(1907~2001)がモデルだ。

 購入先である那覇市の「不屈館」。「辺野古新基地建設許さんぞ カメさん座り込み 503日」。そう記した紙と「瀬長くん」が6体、入口脇の棚に座り込んでいた。

 「毎日辺野古に行けるわけじゃないから。せめてここで一緒に抗議している気持ちです」。瀬長さんの次女、内村千尋館長(70)は言う。

 人形は13年3月の開館前に寄贈された。展示したところ、「似てる」「かわいい」と購入希望が相次いだ。1体千円で販売すると、すぐに品切れに。少しずつ種類が増え、ハチマキを締めたり、三線を弾くようになったり。これまで計560体が売れ、国内外に広まっている。

 「休日はほとんどこれに追われています」。「瀬長くん」の生みの親、愛知県内の労働組合で働く宇野進二さん(50)=名古屋市=は苦笑いを浮かべる。

 西洋の名画やロック歌手の人形を石粉で作るのが趣味。家族旅行中の沖縄で、瀬長さんの写真と出会い、「アゴ骨といい、意思の強そうな目といい、すごい存在感だ」と驚いた。

 材料費以外はボランティアで、収益は不屈館の運営費に回す。合成樹脂をシリコンの型に流し込んで固め、一体ずつ筆で色を塗る。土日は自室にこもって月20~30個を製作し、発送している。「少し力が抜ける、ゆるキャラ風の造形が受けたんですかね。人形を見るたび、辺野古のことを思ってくれれば」と語る。

 半世紀前、米軍の弾圧に屈さなかった瀬長さんの姿は、全県を挙げた島ぐるみ闘争に発展した。

 「弾圧は抵抗を呼ぶ 抵抗は友を呼ぶ」

 記者の机にも座り込んだ「瀬長くん」と目が合うと、彼が残した言葉が浮かんだ。(矢島大輔)