疑問が多く承服できない。最初から官邸内部で調整された、結論ありきの判断と見られても仕方ないだろう。

 辺野古の海に投下された大型コンクリートブロックがサンゴ礁を破壊した可能性が高いとして翁長雄志知事が沖縄防衛局へ出した新基地建設作業の停止指示について、林芳正農相は指示の効力を止める「執行停止」を決めた。

 翁長知事の停止指示に対して防衛局は行政不服審査法に基づき農相へ指示の取り消しを求める審査請求と、結果(裁決)が出るまでの指示の執行停止を申し立てていた。

 決定は裁決までの間、指示を「無効」とするもので、審査請求に関しては今後、審理を進めていく。

 決定書の中で林農相は「県知事の許可が必要な点で、国は私人と変わらないため申し立ての資格がある」と申し立ての適法性を認める。

 本当にそうか。そもそも行政不服申し立ては国民の権利を保護するためのもので、行政不服審査法は第1条で「国民の権利利益の救済」を目的に掲げる。今回は行政機関同士の争いであり、不服申し立てにはなじまない。

 翁長知事は農相宛ての意見書で「法は審査する立場にある国が別の国の機関から申し立てを受けることを想定しない」と厳しく指摘していた。

 防衛省の申し立てを「身内」の農水省が審査するというのは、誰が考えても公平性に欠ける。審査に要した時間も土日を挟んでわずか数日。裁決の妥当性がチェックできない以上、農相にその権限があるかさえ疑わしい。

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 知事の作業停止指示を認めなかった理由について、農相は「普天間飛行場周辺住民に対する危険性の継続による損害」「日米の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害」などを挙げる。

 一見、もっともらしく聞こえるが、論理が飛躍している。なぜ知事の指示が、周辺住民に対する危険性の継続につながるのか。

 仲井真弘多前知事でさえ、一時期「辺野古に固執するのではなく、もっと早く現実的に移設できる県外の場所を探すべきだ」との考えを繰り返していた。

 辺野古への移設計画を見直すことが、むしろ危険性除去の近道であることは、普天間の返還合意から20年近くがたつ現実が証明する。

 所管でもない農水省が、普天間飛行場の危険性や日米関係への悪影響を理由に挙げるのは、防衛省や外務省の言い分を一方的に並べただけというほかない。

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 背景にあるのは、4月末の日米首脳会談や、日本の首相として初となる米議会上下両院合同会議での演説を控え、普天間問題の進展を手土産にしたいという狙いだ。

 安倍晋三首相が五輪誘致の際、福島第1原発の汚染水は「コントロールされている」と安全性を強調したことを思い出す。実際は震災から4年がたっても解決していない。

 同じように新基地反対の民意から目を背け、「粛々と進める」ことだけを繰り返す政府の強硬姿勢が、政治的混乱を深めている。