「わんもカンムリワシないん(俺もカンムリワシになりたい)」。5月20日、東京・有明コロシアム。世界ボクシング評議会(WBC)フライ級新王者となった比嘉大吾選手(22)のしまくとぅば発言に、沖縄中が沸いた。話せない世代によるしまくとぅば。「かっこいい」と若者は受け止め、話せる世代は沖縄の力を感じた。比嘉選手が込めた思いや反響を聞いた。(社会部・西里大輝)

WBCフライ級新王者となり、しまくとぅばで気持ちを表現した比嘉大吾選手(中央)と具志堅用高会長(左)=5月20日、東京・有明コロシアム(日刊スポーツ新聞社提供)

比嘉選手のしまくとぅばを「かっこいい」と感じる池本夢実さん(右)=2日、宜野湾市愛知、琉球ボクシングジム

WBCフライ級新王者となり、しまくとぅばで気持ちを表現した比嘉大吾選手(中央)と具志堅用高会長(左)=5月20日、東京・有明コロシアム(日刊スポーツ新聞社提供)
比嘉選手のしまくとぅばを「かっこいい」と感じる池本夢実さん(右)=2日、宜野湾市愛知、琉球ボクシングジム

 「わんもカンムリワシないん」。試合後のリングで、比嘉選手が叫んだ。一瞬、会場は静まり返り、インタビュアーは戸惑いの表情を見せた。沸いたのは、沖縄出身者がいた2階席の一角だ。

 比嘉選手は浦添市出身。ふだんの会話は共通語で、しまくとぅばを話すことはほとんどない。インタビューでは「すんなりとしゃべれた」という。実は練習は全くしなかった。勝利に、「急にぱんっ!」と言葉が出た。

 同世代のボクサーらはどう受け止めたのか。宜野湾市愛知の琉球ボクシングジム(仲井眞重次会長)の若者に聞いた。

 小学校4年の時に東京から沖縄へ移り住んだウエルター級の本間聖哉さん(21)=中城村。「沖縄出身だからこそ、県民に沖縄の言葉で話したかったと思う」と共感。いつか勝利して、インタビューを受ける機会があれば、「ウチナーヤマトグチで話したい」と力を込めた。

 しまくとぅばは沖縄の文化という島袋真人さん(25)=那覇市。「大切な場面で使われると沖縄のアイデンティティーのようなものを感じる」と受け止めた。

 女子プロボクサーで静岡県出身の池本夢実さん(21)=西原町=は「かっこよかった。地元を思っているなと感じ、うれしかった。沖縄の言葉を勉強し、いつか私も静岡と沖縄の言葉、二つの言葉でインタビューに答えたい」とはにかんだ。

 比嘉選手の言葉は、ジム会長で師匠の具志堅用高さん(62)の発言がオリジナル。「わんやカンムリワシないん(俺はカンムリワシになりたい)」。世界王者獲得後に語った沖縄島の言葉だ。石垣島出身の具志堅さんだが、父親は本部町、母親は久高島出身だ。そのため幼い頃から、両親のしまくとぅばを使っていた。具志堅さんは「僕は八重山の言葉はしゃべれないよ」と笑う。

 具志堅さんは、比嘉選手の言葉に何を感じたか。「挑戦して、世界王者になった。普通は、興奮して喜びを語るのでいっぱい」。世界王者だった具志堅さんだからこそわかる王者の気持ちだ。「沖縄が好きで、沖縄のためにチャンピオンになって帰るんだとの思いから、あの言葉が出た。沖縄と具志堅用高を理解していたんだね」と、うれしそうだ。

 今後もしまくとぅばを使うのか、比嘉選手に聞いてみた。「言うでしょうね。そのときは、またかっこよく言います」と力を込めた。