9秒でまるわかり!

  • 建設業界の有資格者が高待遇の行政に転職する動きが広がっている
  • 一括交付金事業増や民間工事も活況で、行政含め技術者不足は深刻
  • 民間の待遇改善には、行政も単年度予算の見直しなどが必要

 建設系の人材不足を背景に、民間と行政の間で技術者確保をめぐる摩擦が表面化している。沖縄県建設業協会(下地米蔵会長)は、コストをかけて育てた有資格者が、高待遇の県や市町村に転職する動きが広がっていると危機感を示す。行政側も慢性的に人材が不足している。採用要件を緩和する自治体がある一方、募集をかけても採用枠を満たせない事例もある。識者は雇用条件が良い方に人材が流れるのは避けられないとしつつ、業界が一定の利益を上げ、待遇改善につなげる仕組みづくりの必要性を指摘している。(浦崎直己、長浜真吾)

土木・建築系技術者の公務員等への転職状況

 全国建設業協会の昨年4月の調査によると、県内では29社・36人が行政に転職。転職先は市町村が31人、外郭団体などが3人、県が2人。資格別では土木施工管理技士27人、建築施工管理技士5人、建築士1人などとなった。

 年代別では30代が32人で圧倒的に多い。勤続年数は10年未満12人、10~20年11人、5年未満10人と続いた。回答は会員361社のうち65社(18%)で「実態はもっと多い」(県建設業協会)とみる。

 建設業界は行財政改革の一環による公共工事削減を受けて経営が悪化し、従業員削減を余儀なくされた時期がある。ここ数年は状況が一変。安倍政権の経済政策アベノミクスなどで受注量が急増。県内は一括交付金の関連事業のほか、民間工事も活況で業界の人材不足が深刻化している。

 県内には約6千人の技術者がいるが、退職分を補充できなかった場合、15年後には半減するとの試算(県協会)もある。新卒者の採用だけでは追いつかず、県外から中途採用で補っているのが現状だ。

 自治体も技術者不足に頭を悩ませている。那覇市は2013年度、定年退職者や一括交付金事業の増加で特に人手が不足した。定期採用(35歳以下)とは別に受験資格を59歳以下に広げ、急場をしのいだ。14年も学歴要件緩和の試験を実施。担当者は「採用は各部署で必要人数を把握し、決めている」と説明する。

 県も14年度、約30年ぶりに土木初級職(高卒程度)の募集、採用を再開した。担当者は「経験を積んでもらい育てていく」と説明。同年度は上級、初級合わせ28人の採用計画に対し、実際は11人にとどまった。15年度も約30人の採用を見込むが「不足解消は厳しい」との見通しを示す。

 南部地区の建設会社では、昨年中途採用した土木系技術者が、行政に転職した。社長は「人材を持って行かれた困惑はある」とする一方、「本人の意思なので仕方ない。待遇改善をはじめ、業界にとどまってもらえるよう、魅力を高めるしかない」と語った。