菅義偉官房長官が4日、米軍キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区返還式典に出席するため沖縄を訪れる。5日には翁長雄志知事と会談する。

 普天間飛行場の辺野古移設に反対する翁長氏が昨年12月に知事に就任して以降、官邸の「沖縄冷遇」は露骨で、今回が初の話し合いとなる。

 会談を前にした2日の記者会見で菅氏は、「移設に反対する人もいれば、逆に普天間の危険除去を一日も早く実現してほしいという多くの民意もある」と述べた。

 「沖縄の民意を理解していただく」と語った翁長氏をけん制してのことだ。

 しかし、一日も早い危険性の除去は県民の要望であって、翁長氏も県政の重要課題に位置付けている。

 菅氏の言う危険性除去は新基地建設のための方便にしか聞こえない。危険性除去を最優先させるなら、ここまで長期にわたって問題を引きずることはなかったはずだ。

 日米間で普天間の「5~7年以内」の返還が合意されたのは1996年。それが米軍再編ロードマップで「2014年」に先送りされ、おととしの返還計画で「22年度またはその後」とずれ込んだ。

 普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学構内に米軍ヘリが墜落したのは04年のことである。

 危険性の除去が主たる目的であるのなら、事故後すぐに基地は閉鎖されるべきであった。いまだに「世界一危険」なまま放置されていることに疑問を抱く。

    ■    ■

 菅氏の一連の発言にちらつくのは、政権のおごりと、都合のいい解釈である。

 辺野古移設に賛成の声が一定数あるのは否定しないが、忘れてはならないのは、昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で示された「新基地ノー」の圧倒的民意である。

 特に知事選では現職候補に10万票近い大差をつけるなど、これまでにない住民意識の変化を明確にした。その民意のうねりが、衆院選県内4選挙区の全てで移設反対派を勝利させたのである。

 移設反対だけではなく「総合的な政策で選ばれる」とする菅氏の主張は、あきれて検討にも値しない。政治的な誠実さや謙虚さも感じられない。

 もう一つのフレーズ「辺野古が唯一の選択肢」という言い方も、海兵隊の沖縄駐留の必要性が専門家によって否定される今となっては、本土が嫌がるから沖縄に置くことの言い換えと受け取れる。

    ■    ■

 安倍晋三首相が好んで使う「この道しかない」という言葉は、サッチャー元英首相のスローガン「ゼア・イズ・ノー・オルタナティブ(ほかに選択肢はない)」に由来する。この言葉を政権は恐らく辺野古推進の哲学にしている。

 なぜ辺野古なのか、県外はどうなったのか。詳しい説明がないまま、県の頭越しに現行案を決め「唯一の選択肢」や「危険性の除去」を脅し文句のように繰り返している。

 選択肢のない政策はない。国と県が今後も協議を継続するのであれば、辺野古での海上作業を一時中断し、対話の環境を整えるべきである。