【連載「働く」を考える】第3部 働きやすさ求めて

◆堀下社会保険労務士事務所

従業員のパソコンにはその日の退社予定時間が掲げられている。「この時間には帰るという自分自身とほかの従業員への宣言」と堀下和紀さん(左)=浦添市西洲、堀下社会保険労務士事務所

 企業の労務管理や人事コンサルティングを行う「堀下社会保険労務士事務所」(堀下和紀代表、従業員25人)=浦添市。2005年に開所後、助成金申請の代行業務を数多く手掛けるなど、事務所は2、3年で急成長した。しかし、長時間労働が常態化。体調を崩すなどして辞めていく従業員が続出した。

 居酒屋チェーンを経営するワタミ子会社の社員の過労自殺が問題になっていた。

 「これではいけない。売り上げや利益を下げても、仕事のやり方を変えなければと思った」。堀下さんは約3年前をそう振り返る。

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 長時間労働を改善するためにまず力を入れたのがITを使った業務の効率化だ。

 従来は顧客から受けた業務を社内のパソコンで行っていた。そのデータをインターネット上の「クラウド」に保存し管理することで、すべての業務がネットでできるように。

 クラウド化により可能になったのが「テレワーク」だ。ことしから導入し、現在、子育て中の4人の女性が、必要に応じて在宅勤務ができるようになった。

 パート従業員として働く仲村由美さん(38)は3人の子の母。下の子はまだ4歳で、子どもが体調を崩したときに在宅勤務をしている。

 「自宅で子どもをみながら仕事ができるので、仕事が滞ったり、クライアントに迷惑をかけたりしなくてすむ」と話す。

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 さらに取り組んだのが、特定の人に仕事が集中する原因となっていた「職人芸」(堀下さん)をなくし、業務を標準化、共有化することだ。

 1人が担っていた業務を切り分け、分担することにした。急病など仕事ができなくなった場合のリスク管理や休みやすい環境をつくるために、業務は必ず2人以上で担当する。

 1度退職し、再入社した芳賀幸夫さん(36)はかつて、チームなどの統括をしながら、給与計算などの細かな作業も担っていた。従業員の中で1番の長時間勤務。深夜の帰宅が日常で、徹夜することもあった。

 「プレッシャーが大きくて夜中に目が覚めることがあった。長期の休みにもひっきりなしに電話がかかってきた」と振り返る。

 今は午後6時の定時に帰宅する。「以前と働き方が変わった。業務をシェアし劇的に労働時間が減った」と明るい表情を見せた。

 ほかに会社のメールアドレスを1本にして、取引先とのやりとりを「見える化」することでミスを未然防止。約300のテンプレートを作って、業務の省略化につなげた。

 人員を増やしたが、利益は30%超伸びた。

 堀下さんは「働く環境を抜本的に改革するのはトップにしかできない」と力を込めた。

(学芸部・高崎園子)