名護市辺野古の新基地建設をめぐる菅義偉官房長官の発言が波紋を呼んでいる。

 菅氏は3日の会見で、昨年1月の名護市長選、11月の県知事選、12月の衆院選で辺野古移設反対の候補がすべて勝利したことについて「総合的な政策の中で選ばれた」と述べた。

 移設反対の民意が示されたことを認めれば、工事強行の正当性を失ってしまう。だから、何が何でも移設反対の民意が示されたことを否定したいのである。民主国家を名乗る以上、地元の同意を得ずに一方的に米軍基地を建設することは許されないからだ。  昨年、実施された三つの選挙は、これまでの選挙と違って、辺野古移設の是非を正面から問うものだった。この選挙で現職の仲井真弘多前知事は約10万票の大差で敗れ、自民党の4人の国会議員は衆院小選挙区でそろって「討ち死に」した。なぜか。

 いずれも前回選挙で県外移設を公約に掲げたにもかかわらず、移設容認に転じた。公約破りに有権者からレッドカードが突きつけられたのである。有権者は辺野古移設に対して、疑問の余地がないほど明確に「ノー」を突きつけたといえる。

 移設反対の民意が示されたという見方を否定し、「普天間の危険性除去をなんとかしてほしいというのが沖縄県民の声」だと、臆面もなく問題をすり替える菅氏の発言は、沖縄の人々に寄り添うという姿勢からはほど遠い。

 こんな認識で5日の翁長雄志知事との会談に臨むようでは、実のある話は期待できない。

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 民意無視の発言は菅氏だけではなかった。

 自民党県連の会長に就任した島尻安伊子参院議員は4日、県連大会であいさつし、市民の反対運動について「責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)する」と言い放った。

 驚くべき発言である。

 これが安倍政権全体を覆っている空気を反映しているのは明らかである。

 3月26日の自民党国防部会では、辺野古移設について不退転の覚悟で「絶対に進めるべき」だとの意見が相次いだという(3月27日付東京新聞)。

 だが、なりふり構わぬ姿勢を示せば示すほど辺野古移設が自己目的化し、政府が主張する正当性は失われていく。

 仲井真前知事は2011年に「辺野古移設に固執するのではなく、もっと早く現実的に移設できる県外の場所を探すべきだ」と主張した。普天間飛行場の危険性除去を一日も早く実現したいのであれば、そこに立ち戻るべきである。

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 政府の第1のつまずきの石は「地元の頭越しには進めない」という原点を政府が自ら破ったことだ。

 第2は、稲嶺恵一知事時代に県がまとめた普天間受け入れ構想を、県に相談もなく放棄し、閣議決定まで反故にしたことである。

 戦中・戦後の筆舌に尽くしがたい苦難と、三つの選挙で示された民意に謙虚に向き合うことが、政府と県の対話が成立するための条件である。