本紙連載中の「やーさくりさ時代記」。第1部「ギーバルイットーの芋」は戦前戦後の芋農家を、現在掲載する第2部「一番長い避難」は十・十空襲に翻弄された旧那覇市民を描く

 ▼タイトルの「やーさくりさ」はウチナーグチで「飢えの苦しみ」の意味。第1、第2部のストーリーに共通する戦争と食糧の問題に、20年前亡くなった祖母を思い出した

 ▼共働き家庭で育った私は、幼いころ風邪を引くと祖母に預けられた。そんな時に祖母が決まって出したのが卵焼きだ。食欲がないと断っても「かめー」(食べて)と半ば強引に勧める姿を不思議に思った。理由を知ったのは成人してから

 ▼その祖母は戦前11人の子を産んだ。富国強兵策で「産めよ増やせよ」の号令があった時代、一家は表彰されたという。だがその話をする時の表情は険しく「表彰なんか何にもならん」と祖母は言った

 ▼一方、戦時中の話はほとんどしなかった。「九州に疎開したから分からない」と言っていた。だが連載「やーさくりさ時代記」には、砲弾が届く前から、飢えに苦しむ人々の姿が登場する

 ▼多くの子を抱えた疎開は、祖母にとってさぞかし辛い体験だったに違いない。卵は食べることのできないごちそうだった。当時を生きた人々に、戦争の暗い影から逃れることができた人はいなかった。(黒島美奈子)