翁長雄志知事と菅義偉官房長官が5日、那覇市内のホテルで会談した。

 知事就任から約4カ月、やっと実現した官邸との協議の場で、翁長氏は普段より強い調子で沖縄の民意を代弁した。米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐって国との距離が縮まることはなかったが、新基地建設に反対する沖縄側の覚悟と、問題の原点である「安保の過重負担の解消」を突き付けた意義は大きい。

 会談では、菅氏が抑止力や危険性除去を理由に「辺野古が唯一の解決策」とこれまでの考えを主張。翁長氏は基地建設の歴史をひもとき、政権との距離についても触れた。

 米軍上陸後の軍事占領で一方的に土地を囲い込まれ、講和条約発効後、「銃剣とブルドーザー」で強制的に接収されたのが沖縄の基地である。自ら差し出したものでもないのに、危険性除去のために新たな基地を負担しろというやり方に対し翁長氏は「政治の堕落だ」と厳しく批判した。

 辺野古移設で菅氏がよく使う「粛々と」という決まり文句についても、「上から目線の言葉」と指摘し、県民の多くが感じていることを代弁した。

 翁長氏が政府への不信感をストレートにぶつけたのは、知事就任以来、「冷遇」されているからではない。

 名護市長選、知事選、衆院選の三つの選挙で移設反対の候補が全勝し、各メディアの世論調査で7割前後の県民が移設に反対しているにもかかわらず、菅氏がこれを否定するような民意無視の発言を繰り返したからだ。

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 菅氏は「最重要なのは普天間飛行場の危険除去である」と強調している。だが、このお決まりのフレーズは眉に唾を付けて聞く必要がある。

 政府が本気で「一日も早い危険性の除去」を考えているのであれば、仲井真弘多前知事が官邸と約束したという「普天間の5年以内の運用停止」を何が何でも実現させるべきである。

 5年以内の運用停止は「あり得ない」と表明している米側に対し、政府はどのような対応を取ってきたのか、それを語ることが先決だ。

 佐賀空港へのオスプレイの移駐についても、どうなったのか聞きたい。

 普天間問題の原点は過重負担の解消だった。

 安全保障のコストを日本全体で分かち合うという、そもそもの課題にも方向性を示していない。

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 安倍首相は、埋め立て工事の進展を今月末の日米首脳会談のお土産にしたいようだ。地元との「歩み寄り」を演出するため、訪米前の安倍・翁長会談の話も浮上している。

 知事に注文したいのは、政府首脳と会談する際の透明性の確保である。密室での協議は誤解を招きやすく、丁寧な説明が求められる。

 安倍官邸は政府機関を動員し、メディアを最大限に活用して世論を誘導するメッセージを送り続けている。「危険性の除去」など政権が都合よく解釈する言葉を放置せず、民間団体の力も借りて、選挙で示された民意を正確に国内外に発信してほしい。