盆踊りの囃子(はやし)を聞くと、懐かしさとともに、何とも言えない高揚感や安心感に包まれる。縁もゆかりもない土地でもそう感じるから、不思議だ

▼お盆の時期に徳島市で本場の阿波おどりを見た。夜の帳(とばり)が下りる頃、徳島駅近くの新町川沿いに作られた全長122メートルの特設演舞場は見物客で埋まる。威勢のよい「ヤットサー」の掛け声。そろいの法被姿の踊り手が練り歩いた

▼踊るあほうに見るあほう、同じあほうなら踊らにゃ損々-。囃子に歌われるように、踊り手の年代は幅広い。よちよち歩きの幼児、切れのある動きの青年、円熟味を増した高齢者。どの顔も喜びにあふれ、400年の歴史を持つ郷土の踊りへの誇りに満ちていた

▼空を仰ぐと、映画の舞台にもなった標高290メートルの眉山がそびえ立つ。どの方向から眺めても「眉」の形に似ていることから名付けられ、徳島の象徴として万葉の時代から親しまれてきた

▼街を見守るようにたたずむ山のふもとで、老若男女が笛や鐘の音に乗って身を揺らし、里帰りした人々が心を和ませる。ご先祖様も喜んでいるに違いない。まさしく、日本の夏の風景がそこにあった

▼沖縄では旧盆が近づく今ごろ、各地でエイサーの練習に余念がない。地元も、帰省を控える異郷の地でも、きっと黄泉(よみ)の国でも、あのチムドンドンを待っている。(西江昭吾)