個人の住宅でも旅行者らを有料で泊められる住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月に成立した。家主が都道府県などに届け出れば、ホテルや旅館が原則として営業できない住宅専用地域でも、民泊事業ができるようになる。年明けに新法が施行される見通しとなっている。

 急増する外国人旅行客の宿泊先不足が見込まれるため、民泊をその受け皿とし、普及を促す目的で民泊新法は制定された。民泊自体は、すでに始まっているが、必要な許可を得ずに営業する「ヤミ民泊」がまん延し、さまざまな問題が生じてきた。新法の整備は、観光振興と民泊の健全な発展の両立に向けた第一歩といえる。

 家主は届け出に加え、民泊住宅と分かる標識の表示や衛生管理、近隣からの苦情への対応などが義務づけられている。家主が住んでいない住宅では、国に登録した業者に管理を委託し、民泊の仲介業者にも観光庁への登録が義務づけられた。物件の所有者や管理、契約の主体が分かり、トラブル時に対応する責任者を特定できるようになった。

 これまで横行してきた無許可の民泊営業では、騒音やゴミ出しのルールが守られないことが社会的な問題となり、犯罪や事故発生時の対応での不備が指摘されてきた。新法施行でヤミ民泊がなくなる方向へ向かうことに意義はあるが、課題がすべて解消される訳ではない。民泊施設の周辺の迷惑を減らし、住民も宿泊者も安心でき、快適に過ごせる仕組みづくりが引き続き求められる。

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 新法は、客を泊められる日数を年間180日以内に制限しており、日数は地域事情に応じて自治体が条例で短縮することができる。

 届け出の数にもよるが、営業の日数をはじめ、民泊新法に定めるルールが守られているかを、行政がすべてチェックすることは困難である。

 近隣からの苦情は、観光庁が自治体の担当部署を通して家主や管理業者に伝え、是正を促すことになっている。宿泊者が入れ替わる中、速やかに是正が図られるか、実効性には疑問が残る。

 ルールを守らない家主や管理・仲介業者には、業務停止や事業廃止の命令が出され、それでも従わなければ罰金や懲役が科される。

 ルール設定や悪質業者排除のため処分が必要であることは当然である。同時に、ルールが守られているかの監視や指導などを可能にする、実効ある体制整備も急がれる。

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 沖縄は修学旅行での民泊や、体験交流と地域活性化を目的にした民泊で実績がある。安心・安全を重視し、旅館業法に基づく簡易宿所営業許可の取得を、受け入れ民家に促しながら進めてきた。

 新法がこれらの施策にどう影響するかは現時点で見通せない。だが、受け入れ民家が広がれば、特に離島や過疎地では、交流人口を増やし、活性化の起爆剤となる可能性がある。国や自治体には、快適な民泊を担保し、地域活力にどうつなげていくかの視点を盛り込んだガイドラインや条例の策定を求めたい。