全国一律の介護保険から切り離され、市区町村事業に移行した「要支援者」向けサービスの運営に自治体が苦慮している。

 ボランティアなど新たな担い手の確保ができていないためで、担い手不足が、サービス低下を招き、自立支援を後退させないか危惧する。

 介護保険制度では介護の必要な度合いが7段階に分かれており、そのうち軽い方から2段階の「要支援1、2」の高齢者を対象とした訪問介護と通所介護が、2015年度以降段階的に市区町村に移された。

 市区町村が実施する事業は、地域の事情に応じて基準や利用料を定めることができる柔軟性が特徴。サービスは介護事業所だけでなく、NPOやボランティアなどが低価格で提供することも可能である。

 地域住民が助け合う互助の精神はもちろん大切だ。だが人員基準を緩め事業所への報酬を低く抑えるなどのサービス見直しから透けて見えるのは、介護費用の抑制である。

 共同通信の調査によると要支援者向けサービスを市区町村に移したことに対し、自治体の45%が「運営に苦労している」と答えている。県内に限ってみると56・3%に上る。担い手不足のほか「運営のノウハウがない」「移行させたことに無理がある」などの声が上がる。

 期待していた人材が集まらず専門職が低報酬で働かざるを得なくなったり、報酬の低い軽度者サービスから事業所が撤退する混乱も起きている。

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 要支援1、2に認定される人は全国に約176万人いる。

 介護度は軽いとされるが、「掃除や料理といった家事をこなすことが難しい」「人の手を借りなければ買い物やゴミ出しができない」など日常生活には一定の手助けが必要だ。

 さらに1人暮らしなど家族の有無によって、大きな不自由を抱えている人も多い。

 共同通信の調査では、自宅で家事援助などをする訪問介護、通って体操などをする通所介護は、いずれも住民主体型サービスが低調で、実施率は10%に届かなかった。

 「これまで専門職がしてきた支援を住民に任せることに戸惑いがある」という自治体担当者の声は、サービス提供の質を懸念しているのではないか。

 認知症介護などでは初期段階の対応が重度化を防ぐとされ、専門職がその役割を果たしてきた。

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 政府は要支援者に続き、「要介護1、2」の人向けの生活援助も介護保険から切り離し市区町村事業に移す検討をしている。

 新サービスがうまく機能しない中、さらに対象を広げようというのは乱暴な話である。

 まずは市区町村事業でサービスの担い手がどれくらい足りないのか、質は保たれているのか、しっかり検証すべきだ。

 老後の安心を遠ざける要支援者の切り捨ては許されない。