ボクシングWBC世界バンタム級王者の山中慎介選手(34)が4回2分29秒TKOで敗れ、具志堅用高さん(62)が37年前に打ち立てた13度連続防衛の日本記録に届かなかった

▼試合を巡り、セコンドのタオル投入が「早かったのでは」と物議を醸している。関係者やファンを巻き込み、「後半勝負なのに」「妥当だ」と見方が分かれる

▼興南高校ボクシング部出身で、プロに転向した名嘉真堅安さんは1984年6月の試合中、連打を浴びた。セコンドで同級生の羽地克博さん(53)がタオルを投げようとすると、別のセコンドに制止された

▼めった打ちが続き、レフェリーが止めたのはその10秒後。名嘉真さんは羽地さんに向かって笑ったという。「ごめんなー」。そう言っていすに座ると意識を失った。52歳の今、恩納村の実家で車いすの生活を送る

▼右半身まひで言葉と多くの記憶を失った名嘉真さんを、必死で介護するのは父堅次さん(91)ら家族だ。「あの時、ためらわずにタオルを投げておけば…」と悔やむ羽地さんを、堅次さんは「これは運命だから」と逆に励ます

▼脳にダメージを与え合うボクシングで、至近距離にいるセコンドの務めは選手を無事に家へ帰すこと。ボクサーである時間は短く、その後の人生は長い。山中選手の次は再起か、第二の人生か。無冠になったが明日がある。(磯野直)