シンガー・ソングライター ナシルさん(42)=那覇市出身

 伸びのある歌声と軽やかなトークで、全国を股にかけ、活躍の幅を広げている。自他共に認める「鉄子」(鉄道ファン)でもあり、青森県の鉄道会社のイメージソングも手掛けた。「東京と沖縄の懸け橋になりたい」。これからも等身大の歌を伝え続けていく。

「逗子沖縄まつり」で歌うナシルさん=19日、神奈川県逗子市・亀岡八幡宮(長谷川典昭さん撮影)

 幼い頃から快活な子だった。小1から高3まで毎年学級委員長に選ばれ、小6の時にあった海邦国体では、マーチングバンドでサッカーの開会式に出演。首里高時代は「校内で最もテーファー(冗談好き)な人」に選ばれたこともある。

 高校の同級生に歌手の石嶺聡子さんがいる。卒業時にプロデビューが決まっていた彼女を見て「格好いい。こんな人が歌手になるんだ」と人ごとのように思ったことを覚えている。あれから24年。今や、同じプロの舞台に立つ身となり「不思議ですね」と笑う。

 始まりはひょんなきっかけだった。青山学院大1年の時、東京・下北沢の沖縄料理店でバイトしていると、客として来ていたレコード会社のプロデューサーに「イベントの司会をしてみないか」と誘われた。

 いろんな催しで司会をこなしていると、ある会場で音楽関係者の目に留まり、「自分がプロデュースするから歌ってみないか」と声を掛けられた。人前に出るのは嫌いではなく、「やります」と即答。歌手人生の始まりだった。

 最初は妹と「737(ななみな)」というユニットを組んでいたが、妹の結婚に伴い活動休止に。2007年から「nacil(ナシル)」として活動を始め、12年にBEGIN(ビギン)の島袋優さんがプロデュースした楽曲でメジャーデビューを果たす。

 「歌手を辞めようと思ったこともあったけど、いろんな人との縁で続けていられるんです」

 「鉄子」の噂(うわさ)を聞きつけた青森県の弘南鉄道から依頼を受け、今年7月にイメージソング「りんご列車に乗って」を発表。岩木山やりんごの白い花が流れる車窓の美しさをモチーフに作詞・作曲した。

 「自分の思いを曲に込め、表現者として人に伝えていくことが何よりもうれしい」。みんなが口ずさめるような、次世代の子どもたちに歌い継がれるようなものを残すのが今の夢だ。

 「沖縄出身を売りにしているが、『沖縄』だけにこだわりたくない。出会った人々に恩返しできる歌手になりたい」。競争の厳しい芸能界で渡り合い、歌手に憧れて上京を夢見る沖縄の後輩たちのロールモデルになれれば、と願っている。(東京報道部・西江昭吾)=連載・アクロス沖縄<58>

 【プロフィール】ナシル 1975年、那覇市生まれ。本名は名城奈々。2008年に人気アイドルグループ「Hey!Say!JUMP」の楽曲「Deep Night 君想う」に作詞した。今年7月には新曲「もーすぐもずく」をリリース。ラジオ沖縄で与座よしあきさんと「ナシルとよ~ざ~の島んちゅヂカラ」(毎週日曜)を担当している。