東京都小平市で、都道計画見直しを問う住民投票の実施に深く関わった哲学者の國分功一郎さん。3月末、初めて沖縄を訪れ、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前の抗議活動にも足を運んだ。「民主主義」を追求する國分さんに、住民の声が行政に届かない構図はどう映っているのか、聞いた。(聞き手=中部報道部・下地由実子、デジタル部・與那覇里子)

哲学者の國分功一郎さん=3月27日、那覇市のジュンク堂(撮影・岩沢蘭)

 ―中央と地方の意思の対立をどう考えるか。

 小平の運動で大切にしたのは「住民」という言葉。市民には国籍など条件が要る。でもそこに住んでいる人はどんな人でも住民。地域を生かす方法は住民が知っている。だから、住民がどういう意見なのか、中央は十分に聞かないといけない。

 米軍基地問題で政府が、沖縄との交渉ではなく、法律上の争いに終始している姿勢は絶望的だ。行政としての支配権限を強め、司法さえも利用し従わそうとする。単に地元の話を聞く気がないとしか思えない。

 戦後、冷戦の最前線に置かれた東アジアで、日本が「民主主義ごっこ」をできたのは、沖縄に矛盾を押しつけ見えないようにしていたから。長い歴史に渡って、意見を出し合い、物事をよりよくしていくという視点が欠けていると思う。

 ―住民投票が持つ意味は。

 住民投票は、議会や行政が都合よく行うと、自分たちを正当化できる。実はすごく危険な手。権力がやろうとした場合には気をつけないといけない。

 でも住民が望んだ場合にはまったく意味が違う。みんなが問題を共有し議論する。いろんな情報が流れ、考えが深まる。どういう選択がいいか。みんなが考えて決めるという民主主義の基本的なプロセスがうまくいった時、住民投票は起こる。

 ―民主的な社会に必要なことは。

 哲学的に、厳密に民主主義を言おうとすると、1人残らず全員が参加し決定しなければいけなくなる。でも、そんなことは絶対できない。誰にも民主主義の完成形はわからない。だからこそ、プロセスや社会のありかたに工夫を重ね、少しずつ民主的にしていく努力が欠かせない。

 小平の住民運動が注目を集め、好意的に受け止められたのは、糾弾型ではなく、提案型だったから。これからは、『こうするとうまくいきますよ』という提案、マネジメントの視点が大切になる。次のステップも具体的に考え青写真を示す。そうすると共感する人は増えるし、共感する人が増えれば無視できなくなっていく。

 【小平市都道計画と住民投票】 1963年に計画決定された市内の雑木林や玉川上水緑道を通る約1・4キロ幅36メートルの都道建設について、住民が条例制定を直接請求し、2013年に実施した住民投票。計画の見直しの意思を問うた。投票率は35・17%。投票率50%未満なら不成立とした条例などにより開票されなかった。住民が市に投票用紙の開示を求めた訴訟は、一、二審とも住民の訴えを退けており、現在、上告中。

 【プロフィル】國分功一郎(こくぶん・こういちろう) 1974年千葉県生まれ。高崎経済大准教授。専門は哲学。著書に「暇と退屈の倫理学」、「来るべき民主主義―小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題」など。新刊は大竹弘二氏との共著「統治新論 民主主義のマネジメント」。