妊娠を公表した国会議員が「辞職すべきだ」とバッシングされた。

 この時代にである。女性議員が増えず、少子化に歯止めがかからないのも無理はない。

 先月中旬、無所属の鈴木貴子衆院議員(比例北海道)が、自身のブログで妊娠を報告した。切迫早産の診断を受け、予定していた会合に出られない心苦しさなどもつづっている。

 すると、多くの激励とともに、批判的なコメントが書き込まれたという。

 「だから女性議員っていうのは…」「任期中の妊娠はいかがなものか」「職務放棄ではないか」

 鈴木氏は、妊娠することが国民の代表としての責任や公人としての立場の放棄という考えは承服できないと反論する。同時により希望のある社会を築く決意を示す。

 女性政治家の活躍を阻む空気は、妊娠や出産を理由にした職場での嫌がらせ「マタニティーハラスメント(マタハラ)」とつながっている。マタハラ被害でよく耳にするのも上司や同僚からの「迷惑」「辞めたら」の言葉だ。

 妊娠・出産は女性の多くが経験するライフイベントである。

 女性が仕事と子育てを両立させるには男性の家事・育児参加が欠かせない。それなのになぜ男性の「家事放棄」「育児放棄」は批判されないのか。病気による休みは許されて、妊娠による休みが許されないのはなぜなのか。

 同僚議員から女性の権利を擁護する声がほとんど出ないのも残念である。

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 国会議員の子育てを巡って、総務政務官を務めた自民党の金子恵美衆院議員(新潟4区)が、公用車で1歳の長男を保育所に送っていたことが週刊誌で「公私混同」と報道された。

 金子氏によると、普段は自宅から保育所まで20分かけてベビーカーを押している。移動しながら打ち合わせが必要な時に機密保持の問題もあり公用車を使っていた。運用ルール上の問題はない。

 報道を受け公用車での送迎をやめたが、働くママたちからは通勤途中に保育園に寄ることができなければ、仕事と育児の両立は難しいとの声が上がる。

 金子氏は鈴木氏への妊娠バッシングに対し、「私も党内で『女、子どものことを持ち込むな』と言われた」ことがあるとも語っている。

 出産や子育てをする女性議員が少しずつだが出てきたことで見えてきた問題だ。

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 「女性の活躍」は安倍政権の成長戦略の柱で、政府は2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を掲げる。

 しかし国会議員に占める女性は13%にとどまり、目標にはほど遠い。

 家庭を犠牲にし「男性化」した女性だけを受け入れる女性活躍から、多様な働き方を認める女性活躍へ。鈴木氏と金子氏が投じた一石を、男女共同参画時代の新たな政治家像につなげるべきだ。

 踏み込むべきは古色蒼然(そうぜん)とした政治風土である。