那覇労働基準監督署は、安木屋(那覇市)が正社員(退職者も含む)12人に対し違法な残業をさせていた労基法違反の疑いで、法人としての同社と、社長(42)と店長(36)を逮捕、送検した。

 労働時間についての労使協定(三六協定)を締結せず2015年4月から17年4月までの約2年間、1日最大8時間半の残業をさせた疑い。加えて、同期間の残業代の一部となる計580万円余を支払わなかった容疑だ。

 同様の容疑による逮捕は同署で初。県全域でも1989年以降初めてと、今回、強い姿勢を示した形の労基署。理由として、同社が度重なる行政指導に従わなかった点と、社長と店長の共謀が疑われるという「悪質性」を挙げた。

 労基署は現在、容疑に対する社長らの認否を明らかにしていない。同社会長は「残業の認定について労基署との間で見解の相違があった」とのコメントを発表している。

 一方、本紙報道では、元従業員らが、棚卸しなどでの徹夜勤務の常態化や、残業代の多くが不払いだったことを証言している。

 今回の逮捕の直接的な容疑は過去2年間のものだが、記者会見で労基署は、こうした違法行為が長年続いていた可能性を指摘した。

 風間勝署長は「労基署が求めた報告をせず、社長は面会要求にも応じなかった」と同社の対応を批判。「行政指導を受けて改善に取り組むほかの事業者との公平性もある」と、逮捕は「一罰百戒」の側面もあると示唆した。

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 安木屋の強制捜査は、労働時間と労働対価に対する雇う側の自覚の足りなさを浮き彫りにした。

 県内では例年、同様の容疑で数件~十数件の企業が書類送検されている。政府が「働き方改革」を打ち出す中、今年はすでに過去5年で最多ペースの13企業が、書類送検された。

 厚労省は今年5月、違法残業をはじめとする労働関係法令の違反で書類送検された企業の社名公表を開始。それによると昨年10月から同月までに全国で334企業が書類送検されていた。うち県内は12社。最多は建設業関連だが、輸送業やクリニックなど業種は多岐にわたる。

 こうした企業は7月末時点で409企業に増え、労働を取り巻く全国的な悪弊の根深さを露呈している。

 連合が7月に公表した長時間労働に関する実態調査でも、企業の半数超が三六協定を締結していないなど、企業の順法精神の欠如が明らかになった。

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 残業時間の上限をあらかじめ労働者と取り決める同協定については、協定自体が残業の青天井をつくり出しているという批判もある。ただ、それ以前に、協定を結ばず無法に残業を命じる雇用主が後を絶たない。

 厚労省は来年度から全国の労基署の監督官を計100人増員する方針という。違法な実態の取り締まり強化はもちろんだが、労働者の権利軽視がこれだけはびこる中、まずは雇用主へ法令の周知徹底が求められる。