アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが両側卵巣卵管摘出術を施行したというニュースが、3月24日に世界中を駆けめぐりました。

 ジョリーさんは乳がん・卵巣がんに罹患(りかん)しやすいBRCA1遺伝子変異を有しており、2013年にリスク低減両側乳房切除術、今回はリスク低減両側卵巣卵管摘出術を施行しました。

 遺伝性乳がん・卵巣がんに対する研究が世界中で進む中、今後日常診療においても本問題が与える影響が非常に大きいと考えられます。

 日本における遺伝性乳がん・卵巣がんの意識はまだまだ低い印象があります。スタンフォード大がん研究所では日本と異なり来院患者の約5割以上の方が、必ずと言っていいほど遺伝性乳がん・卵巣がん症候群について質問をしてくる印象があります。またジョリーさんが施行したリスク低減両側乳房切除、卵巣卵管切除を施行されている方も数多くいらっしゃいます。

 当然ながら、リスク低減手術にはメリットがあり、BRCA1/2遺伝子変異保有者のリスク低減両側乳房切除術で乳がん発症リスク90%以上減少、また卵巣がんの場合は、リスク低減卵巣卵管摘出術により、卵巣がんの発症のみならず死亡率も減少することが報告されています。

 他にもBRCA1/2遺伝子変異保有者の、若年時からの専門施設による検査の推奨、化学予防(タモキシフェンの予防投与)なども乳がん発症予防に一定の効果が認められます。

 ジョリーさんの選択は、乳がんや卵巣がんの発症予防に最も効果の高い治療選択だと考えられますが、病巣のない乳房や卵巣を切除することの倫理的側面、あるいは切除後の痛みやホルモンバランスなど、さまざまな副作用も踏まえ検討しなければならないことがたくさんあります。

 ただ、少なくとも遺伝性乳がん・卵巣がん症候群という疾患を多くの方に認識していただくことは非常に重要と考えられます。

 濃厚な家族歴を有する際は遺伝外来受診をお勧めしますし、また必要な時には遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の遺伝子検査を受けることが、人生設計を考える上で非常に重要ではないかと、考えられます。

 県内で遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の実施施設は「日本HBOCコンソーシアム」のホームページをご参照いただけますと幸いです。(玉城 研太朗・那覇西クリニック乳腺科)