第二次世界大戦後のポーランド。スターリンの全体主義の下、自由への精神と自らの絵筆を曲げない実在の芸術家、ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの生きざまを描いたアンジェイ・ワイダ監督の遺作。全編に体制への反発と芸術への愛情が貫かれる。

「残像」の一場面

 大学で芸術を教えるストゥシェミンスキは学生から慕われる温厚な人物だ。一方、芸術活動にかけては周囲に耳をかさない頑固さを見せる。その意固地さが、芸術を政治に利用しようとするポーランド政府の怒りを買い、生きがいである芸術をはじめ、生活すべてが奪われていく。

 彼いわく、残像とは「物を見た後、網膜に残る色」。そして「人は認識したものしか見ていない」とも言う。創作の場面を除き、全体にくすんだ色使いの映像が目に残る。権力に芸術が押さえつけられる世界の色のようにも思えた。(学芸部・天久仁)

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