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  • 訪米前に世論を引き寄せたい首相の意向で知事との会談が決まった
  • 政府内には「風向きが沖縄側に吹きつつある」との危機感があった
  • 知事側も新基地反対の民意を全国に発信する好機ととらえている

 電撃的に発表された安倍晋三首相と翁長雄志知事のトップ会談は、政府への批判的な世論を気に掛けた首相による戦略的な仕掛けでもある。メディアの注目が集まる場で政府の考えを訴え、国民に辺野古移設への理解を得たい政府。対する知事側も国内外へ沖縄の考えを発信する絶好の機会ととらえ、一歩も譲らない構えだ。(東京支社・大野亨恭、政経部・福元大輔、比屋根麻里乃)

東京へ出発前に、安倍首相との会談について記者の質問に答える翁長雄志知事=16日午後、県庁

 「そろそろだと思う」

 菅義偉官房長官と翁長氏の面会から数日後、首相は日米首脳会談前に知事と会談する可能性を周辺に示唆した。

 知事は菅氏との会談で、沖縄戦を原点とする基地負担の歴史的な系譜を切々と訴えた。政府内にも「敵ながら見事な演説だった。世論の風向きが沖縄側に吹きつつある」(官邸筋)との見方が上がった。そんな現状に警戒感を示す首相自身の意向で、トップ会談の調整は菅氏との会談直後から始まっていた。

 首相は知事就任から4カ月が経過したこともあり、仲井真弘多前知事への“配慮期間”は過ぎたと判断。周辺は「かつて選挙応援に駆け付けた関係でもある翁長氏と、首脳会談前に会うことが得策と踏んだ」と明かす。

 電撃会談に関する情報管理は徹底していた。16日午後、知事の上京を聞き付けた記者が事実関係を尋ねると、県幹部は「とにかく午後4時から、官房長官の会見を見てほしい」と繰り返した。県庁内にも、かん口令が敷かれていた。

■手綱を握る

 「首相本人が世論を引っ張る手綱を握った」。政府関係者は会談の背景をこう解説する。

 知事との会談を早期に実現することで政府側には「沖縄との信頼関係が醸成できる」との期待感がある。

 一方で、訪米前に国民へ「辺野古は米側との約束事」との印象を植え付けることで、世論を政府側へ引き寄せることができるとの判断が働いたという。

 「次は政府のテーブルで話をする番だ」。冒頭の公開が数分間と短く、後は完全非公開で行われる官邸での会談は「こちらのペースに持ち込める絶好の機会だ」と強調する。

■自身の言葉

 一方の県側も今回の会談を「いいタイミングだ」(県幹部)と歓迎。「知事の訪米前に直接、辺野古移設反対を首相に伝えることが重要。知事の言葉は全国や米国にも発信されるだろう」と知事の考えが世論に反映されると分析する。

 別の幹部は「知事から反対を聞きながら、米国に『沖縄は理解している』とはとても言えないだろう」と期待する。

 事務方は会談時に知事が手元に置くコメントを用意する一方で、こう強調した。

 「知事は自分の言葉で語るだろう」