よく文房具を買いに行くなじみの店だった。レジに立つ従業員の顔色はどうだっただろうかと記憶をたどった

▼オフィス用品を販売する「安木屋」の社長らが労働基準法違反の疑いで逮捕、送検された。労基法が定める労使間の協定なしに残業させ、支払っていない賃金があった。従業員は夜中の3時半まで働くことがあったという

▼事件で店のイメージは大きく損なわれた。客の中には労働者も多いはず。「ブラック企業」だと分かれば、客足が遠のいてしまうかもしれない

▼連載中の「『働く』を考える」で取材した労働者からも、深夜に及ぶ勤務や残業代不払いの実態が語られた。県労連の嶺間信一事務局長は今回の事件は「氷山の一角どころか氷山の一点でしかない」と指摘した

▼各都道府県の労働局はことし5月からホームページで、労働基準関係法令違反で送検した「ブラック企業」の公表を始めた。毎月更新し、公表から1年間掲載される。県内は現在9社。電通はじめ、エイチ・アイ・エスなど大手の名前も並ぶ

▼「募集しても人がこない」。いま、あちらこちらから聞こえてくるのが人手不足の問題だ。働き手がいなければ経営そのものが成り立たなくなる。労働に関する基本ルールが守られていなければ、客からも、労働者からもそっぽを向かれることになる。(高崎園子)