報道番組の内容をめぐって自民党の情報通信戦略調査会がテレビ朝日とNHKの幹部から事情を聴いた。

 放送免許の許認可に影響力を持つ政権党が、特定の番組について関係者を呼び出し説明を求めるのは、放送法で定める「番組編集の自由」を脅かす恐れがある。野党だけでなく、連立を組む公明党からも「報道の自由」の観点から懸念の声が上がっている。

 自民党が問題にしているのは、コメンテーターの元経済産業省官僚が「官邸の皆さんからバッシングを受けてきた」と訴えたテレ朝の「報道ステーション」と、やらせが指摘されているNHKの「クローズアップ現代」だ。

 元官僚がいうバッシングについて菅義偉官房長官は「事実無根」と否定。テレ朝も番組内で報道から逸脱した発言があったことを謝罪している。NHKは調査委員会を立ち上げ「一部に誤りがあった」とする中間報告を発表した。

 自民党側は「真実が曲げられた放送がされた疑いがある」として、放送法に基づく聴取だとする。

 確かに報道の信頼に関わる内容で、放送局自ら批判に向き合わなければならないケースではあるが、必要なのはそれぞれが自浄能力を発揮し検証していくことだ。幹部を呼んでの事情聴取は極めて異例で、番組への介入と見られても仕方がない。

 放送法第1条は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する」と記す。

 報道の萎縮が危ぶまれる介入は慎むべきである。

    ■    ■

 報道番組に注文をつけ、メディアをけん制する動きは、安倍政権になって強まっている。

 昨年11月、TBSの番組に出演した安倍晋三首相は、アベノミクスに批判的な街の声が紹介されたことに対し、実態が「反映されていない」と非難した。

 自民党は衆院選報道に関しても、在京各局に「公平中立」を求める文書を送付したほか、テレ朝のアベノミクス報道を批判し「公平中立」な番組づくりを要請している。

 政権政党が番組の表現手法にまで立ち入るのは、言論統制につながりかねず、避けるべきである。

 表現の自由の本質は、権力を批判する自由だ。それが立憲主義にのっとった近代憲法の基本だということを忘れているのではないか。

    ■    ■

 17日に開かれた安倍首相と翁長雄志知事の初の会談で、当初の段取りとは違い、知事の発言の途中で報道陣が退室させられる場面があった。

 公開されたのは先にあいさつした首相の「辺野古が唯一の解決策」などお決まりのフレーズで、知事が伝えたかった沖縄側の思いは途中で遮られてしまった。

 都合のいい情報だけを発信する、あるいは都合のいいように変えていこうとする政権の姿勢は、普天間飛行場の辺野古移設をめぐる政府の対応と通ずるところがある。政権の考えとは異なる声を排除しようとする動きを危惧する。