パスポートに、インクが薄すぎて判読できない出入国スタンプが残っている。16年前キューバを訪れた時のものだ

▼飛行機の乗り継ぎで米国に寄り、キューバ渡航歴が分かると面倒に巻き込まれる。それを心得たキューバの入国審査官が、わざわざ最後に近いページに「ちょん」と押してくれた。超大国の深い憎悪と、小国の柔軟な対処法を垣間見た

▼米国にとって、勝手に「裏庭」と呼んだキューバで革命が起き、利権を奪われたのは「飼い犬に手をかまれた」感覚に近い。以来、空襲に上陸作戦、経済封鎖と、執拗(しつよう)に体制転覆を狙ってきた

▼東部には、米軍が112年前の条約に基づいて一方的に居座るグアンタナモ基地。テロ容疑者とみなした人の収容所がある。「犬」扱いするような残虐な拷問は、民主主義国家を名乗る米国の汚点であり、国内外で使い分ける二重基準の象徴だ

▼両国首脳が今月、59年ぶりに会談し、国交正常化へ動きだした。グアンタナモの清算は避けて通れない

▼沖縄の基地も70年がたち、とうに清算の時を迎えている。地元の返還要求無視も、米国内ではあり得ない二重基準の運用も、グアンタナモと共通だ。近く訪米する安倍晋三首相と翁長雄志知事のどちらに耳を傾けるのか。沖縄の異常な基地をどう「正常化」するのか。ここでも米国は問われる。(阿部岳)