2017年(平成29年) 11月19日

大弦小弦

[大弦小弦]ポーランド映画の巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の遺作「残像」…

 ポーランド映画の巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の遺作「残像」をシネマパレットで見た。第2次世界大戦後、スターリンの全体主義に支配されたポーランドで、絵筆を曲げなかった実在の画家ストゥシェミンスキの生涯を描いた作品だ

▼前衛的な表現が政府に問題視され、国策に沿った作品作りを迫られるが拒否。数人の学生と闘いを挑むも全てが奪われていく。教授の職や発表の機会、絵の具、食糧までも

▼ポーランドは1795年、周辺3国に分割され、123年間も独立を喪失した。主権回復もつかの間、先の大戦でナチスドイツとソ連に分断され、戦後はソ連に間接統治された歴史を持つ

▼抵抗と挫折を繰り返す民衆の姿を、ワイダ監督は映画で描き続けた。検閲官とせめぎ合い、脚本執筆から撮影許可が出るまで12年を要した作品もある。「残像」を完成させた直後の昨年10月、90歳で逝った

▼世界中で極右勢力が台頭し、排外主義がはびこる現状を死の直前まで憂いていた。それでも「どのような答えを出すべきか、私たちはすでに知っている」

▼鑑賞後、個々人の市民的自由は自動更新されるものではないと改めて思う。ロビーに張られたポスターには「人はそれでもなお、信念を貫けるのか」の文字。「自分は大丈夫」と言い切れるかと、巨匠に突き付けられた気がする。(磯野直)

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