安倍晋三首相と中国の習近平国家主席は22日、インドネシアの首都ジャカルタで会談した。

 両首脳の会談は、昨年11月に北京で開催して以来、およそ5カ月ぶり。アジア・アフリカ会議(バンドン会議)の60周年記念首脳会議に出席する合間をぬって会談が実現した。

 前回の会談が双方硬い表情のまま立ち話程度の接触に終わったのに対し、今回は一歩進んで着席しての会談となった。両国の関係が一時期の最悪状態から徐々に脱しつつあることを印象づけた。

 この歩みを確かなものにしていくためには、関係改善に向けた双方の粘り強い努力が欠かせない。当面の焦点は、安倍首相が予定している「戦後70年談話」の中身である。 安倍首相は20日夜のBSフジ番組で、村山富市首相談話に盛り込まれた「植民地支配と侵略」「心からのおわび」などの文言にこだわらない考えを明らかにした。

 「歴史認識では(村山談話などの)基本的な考え方を引き継ぐ。引き継ぐと言っている以上、もう一度書く必要はない」とまで言い切った。

 村山談話の核心部分は「植民地支配と侵略」「心からのおわび」の文言に集約される。核心に触れずして「基本的な考えを引き継ぐ」ことができるのか疑問だ。

 満州事変以降の中国大陸での旧日本軍の軍事行動は「侵略」と言うしかないものだった。安倍首相がそのような歴史認識を共有するのであれば村山談話を踏襲して「侵略」という言葉を使うべきである。

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 10年前の2005年4月に開かれたアジア・アフリカ会議の50周年記念首脳会議で、当時の小泉純一郎首相は、村山談話を踏襲し、「植民地支配と侵略」「心からのおわび」などの言葉を使い、この表現を8月の戦後60年談話にも反映させた。

 ところが、安倍首相は今回の60周年記念首脳会議での演説で、「先の大戦の深い反省」を口にしたものの、村山談話の核心部分には触れなかった。中韓両国や国際社会がどう反応するかを探るため観測気球を打ち上げたのか。それとも戦後70年談話を先取りしたのか。

 安倍首相は一昨年4月、「侵略の定義は学会的にも国際的にも定まっていない」と国会で答弁した。その延長で70年談話から「植民地支配と侵略」「おわび」の文言を削除すれば、談話発表が逆効果を招く恐れがある。

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 22日の日中首脳会談で習近平国家主席は冒頭、「日中関係の発展について見解を聞かせてほしい」と切り出し、安倍首相は「戦略的互恵関係の推進」を強調した。

 中国が注視しているのは、戦後70年談話の中身であり、その中で「かつての戦争被害国に対する配慮、反省を示せるかどうか」(程永華駐日大使)である。

 「前事不忘 後事之師」-1972年の日中国交回復の際、周恩来首相が使った言葉である。前のことを忘れず後の戒めとすることが、未来志向の和解をもたらす。