最近、新聞やテレビでがんの生存率が報道される機会が増えています。以前は、がんというと治療が難しい病気というイメージを持たれている方も多かったと思いますが、最新の発表ではがん患者の5年生存率は69・4%にまで達しています。がんの生存率は徐々に向上し、治る可能性も少しずつ高くなってきているのです。部位別にみると、最も生存率が低いのが、すい臓がんであることをご存じでしょうか。最新のデータで、すい臓がんの5年生存率は9・2%でした。では、どうしてすい臓がんは治りにくいのでしょう。

 一般的にがんの完治が期待できる治療方法は病巣部を手術によって摘出することです。薬(抗がん剤)でがんが完治する(または、長期間進行を抑える)ことができればありがたいのですが、残念ながらそのような抗がん剤はまだ開発されていません。すい臓がんは発見時に進行がんが多くて摘出手術が行えないことが多く、生存率が低い理由の一つになっています。実際にすい臓がんの切除率は患者全体の20~40%程度しかありません。

 なぜ、すい臓がんは切除率が極めて低いのでしょう。一般的にがんは遠隔転移(がんが発生した部位から離れた肺や肝臓などの臓器に転移すること)があると、手術でがんを完全に切除できる可能性が低いです。手術をしても早期に再発しやすいため、発見された時に遠隔転移があると、切除不能になることが多いのです。逆をいえば、遠隔転移がなければ切除が可能なことが多いということです。しかしすい臓がんは遠隔転移が多いだけではなく、転移がないにもかかわらず、局所で進行し切除が困難となることが多いのが特徴です。そのようなすい臓がんを局所進行すい臓がんと言います。

 これまで局所進行すい臓がんは手術ができないか、切除をしても90%以上が早期に再発していました。しかし最近では手術の前に抗がん剤と放射線療法を行う術前化学放射線療法という治療法が注目されています。これまで切除ができなかった局所進行すい臓がんも、この方法で切除ができるようになり、長期生存が得られた事例が増えています。

 この治療法は抗がん剤や放射線療法の後に手術を行うので、手術の難易度も高くなり、すい臓の専門施設で受けていただく必要があります。すい臓がんで遠隔転移がないにもかかわらず手術は困難と診断された際には、術前化学放射線療法を行っているような、すい臓専門施設のセカンドオピニオン外来受診をお勧めします。(伊佐勉・南部徳洲会病院外科)