養護老人ホームは、家族がいなかったり、経済的な困窮などから保護が必要なお年寄りが入所する施設だ。そう聞いて天涯孤独を思い浮かべたが、一人一人に話を聞くと実際には違った

▼若い頃は仕事に就き、結婚し、子どもをもうけた-。身の上話からは、多くが皆と変わりない生活を送ってきたことがうかがえる。転機は病気や離職、死別、家庭内の不和など誰にでも起こりうるハプニングだ

▼年を重ねれば、そうした出来事に遭遇する確率は高くなる。体に例えると高齢になるほど足元がおぼつかなくなり、つまずきやすくなることと同じ。だから杖(つえ)をつき、誰かの手を取る

▼公的年金や高齢者医療、介護保険制度はつまり、そういうことだ。「老い」への対処は一人ではもちろん、家族や親族がいても難しい。社会で高齢者を支える仕組みはそのためにある

▼しかし今、その仕組みが岐路にある。ここのところ4月になると制度の大幅改変が実施される。昨年は70~74歳の医療費の窓口負担割合が1割から2割に。今年は公的年金史上初の抑制策が実施された

▼65歳以上の介護保険料も4月から軒並み上がった。背景に少子高齢化が言われて久しいが、もっぱら財政問題による点に不安を感じる。支えはどうあるべきか。いずれ老いる私たちもその議論に加わるべきだろう。(黒島美奈子)