首相官邸の屋上で小型無人機「ドローン」が見つかった事件を受け、政府は、ドローンの利用を規制する法整備の検討に入った。今国会中に成立させる方針だ。

 ドローンは、急速な普及が進む一方で、運用ルールの整備が追いついていないのが実情だ。今回の事件のように悪用されることを防ぐ上でも、運用ルールの策定を急ぐべきだ。

 官邸屋上のヘリポート近くで見つかったドローンには放射能マークのシールを貼った容器が取り付けられており、容器からは、微量の放射性セシウムが検出された。

 その後、福井県在住の男(40)が出頭し、威力業務妨害の疑いで警視庁に逮捕された。容疑者の男は「反原発を訴えるために、自分が官邸にドローンを飛ばした」と話しているという。放射能で脅すような反原発運動などあるはずがない。

 まず、問いたいのは政府の危機管理である。容疑者は「4月9日に飛ばした」と供述している。供述通りだと、約2週間も官邸屋上に不審物が放置されたままになっていたことになる。厳重な警備が敷かれているはずの首相官邸だが、屋上は見逃されていた。警備上の死角というには、あまりにお粗末だ。

 官邸で開かれた省庁連絡会議では、重要施設の警備態勢の強化など対策を検討することを確認した。しかし、規制一辺倒の議論に終始すべきではない。ドローンはさまざまな分野での実用化が期待される技術だ。活用と規制のバランスが必要だろう。

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 ドローンは、世界の研究機関や企業などが活用方法を模索している新たな成長市場でもある。

 災害現場や危険地帯での調査、災害時の物資の輸送などへの活用も期待されている。

 東京電力福島第1原発では周辺の放射線測定に使われ、昨年9月の御嶽山噴火では機体のカメラがとらえる映像で、降灰の状況を確認した。

 米国の通販大手では商品の宅配サービスを検討している。日本国内でも定期航路が少ない離島にドローンを使って食料や医薬品を届ける計画が進んでいる。

 最近は、家電量販店やネット通販でも手軽に購入できるようになり、商業目的や趣味での利用が急速に広がっている。一方、事故や私有地への無断侵入などプライバシー侵害が問題視されている。

 飛行区域の制限や購入時の登録、事故に備えた保険加入の義務づけなど、最低限の規制は不可欠だ。

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 国土交通省は、昨年12月にルールづくりに向けた検討会を発足させ、今月6日に有識者会議を開いたばかりだった。日本では航空法上、ドローンは模型飛行機と同じ扱いで、空港周辺以外の一般空域では、低空で飛ぶ際の制限はほとんどないのが実情だ。

 欧米の規制は日本より厳格だ。日本でも各国と連携した国際標準のルールづくりが必要ではないか。

 一定のルールを踏まえた活用が、さまざまな課題を克服するとともに、健全な技術革新につながるだろう。