現場たたき上げの刑事OBは「捜査しやすくはなるけど…。いい方向にだけ使うとは限らないよ」とみる。「監視社会だね」と、ため息も一つ

▼犯罪捜査に、携帯電話の衛星利用測位システム(GPS)の位置情報が使えるようになる。これまで使っていた基地局の情報は最大数キロの誤差があった。GPSなら、ほぼピンポイントで持ち主の移動経路がたどれる。誘拐事件などに生かすという

▼ただ、対象の犯罪は限定されていない。令状が必要だとはいえ、捜査機関の請求を裁判所が99%認める現状では、チェックとは呼べない。OBが懸念するように、行動監視の対象が無制限に拡大する恐れがある

▼米政府の市民監視を内部告発した中央情報局(CIA)元職員スノーデン氏は、重要な面会では携帯電話の電源を切った上、電池パックまで外したという。情報機関が外部から起動させ、盗聴できることを知っていたからだ。日本だけは例外だ、と誰が断言できるだろう

▼GPS利用は、総務省が携帯電話会社向けの指針を改正すればできる。国会の議論もないまま、意見公募を経て6月にも始まる

▼国がじわじわとプライバシーを侵食している。私たちにとって譲れない一線はどこだろう。声を上げなければ、大事に持ち歩く携帯電話が、いつか監視装置に化けているかもしれない。(阿部岳)