◆沖縄そば29杯完食を目指す物語です。

 前回(1~3杯4~6杯7~10杯10~15杯)の続きです。

 15杯の折り返し地点を超え、ゴールまでひた走るべく、積極的に沖縄そばのはしごに挑戦する。こんな無謀なこと、人生で最初で最後と願う、いやそうありたい。でもそのころから、沖縄そばを食べない罪悪感を覚えつつ、パスタやソーメンチャンプルーを食べる自分がいた。これはもう、沖縄そばおよび麺類の呪いだと思う。(これを書いている9月1日たまき雑感)。

【16杯目】おばあに人気の店で、麺にうっとり…「亜砂呂」

 「そば処大笑(うふわらい)」のかつおの匂ひの余韻を引きずりつつ、翌8月24日、はしごそばの旅へ。

 バイトを終え、軽い足取りで歩を進める。連日のそばにもかかわらず、胃も心も愛しいあなたのもの。もはやそばのとりこである。はしごそばの1店目に選んだのは、昼のバイト中によく弁当を買いに来る「亜砂呂(あすなろ)」

 この店のごぼうの肉巻きや、かまぼこにチーズが入った総菜が美味。おばあやおばちゃんなど常連さんが多く、お昼時には総菜の量り売り目当てで行列ができる。「おかずがおいしいなら、そばも間違いないだろう」と確信を持って扉を開く。

 店内は定食やぜんざいを食べるおばあでにぎわっていて、座るのを忘れて和んでしまう。席はおばあ、空席、おばあ、空席の絶妙な配置だ。おばあとおばあに挟まれるのは、景観を損ねる気がしてためらわれ、私はドアの真横にある空席に収まる。どのおばあも見渡せる席だが、どのおばあも私を見ているし落ち着かない。「ここで、そばをすすれるのか」と軽いシミュレーションをしていると、示し合わせたかのようにおばあたちは立ち上がる。

照喜名製麺を使用した「亜砂呂」。うん。おいしい!

 「え、やだ、帰っちゃうの? おばあたちの日常を観察したかったのに…」という私の心の声はもちろん届かない。おばあがさっきまで温めていた真ん中の席に、ひとりぽつんと座り直す。周りを見渡すと、おばあが食べていたぜんざいのお皿があった。お皿には、白玉がきれいに2個残されている。「おなかいっぱいだったのかしら、それとも喉に詰まるのを心配してかしら」とか余計な詮索をしていたら、私の沖縄そばが運ばれてきた。

 おわんを二度見するほど、麺の存在感がただならぬ様子。「これは!!」と箸を割りながら、もう一度ゆっくりのぞく。半透明の出汁に浮かぶは、いつもは総菜コーナーで見かけるスタンダードな三枚肉と、ところどころからニンジンが「こんにちは」と顔をだす八重山かまぼこ、その上を緑と赤の差し色コンビ、毎度おなじみネギと紅ショウガでめかしこんでいる。

 気になるのは、その奥に潜むあの麺だ。スープと絡めながらひと口、食べる。これまでの経験を超えた麺だった。しっかりとした縮れを残しつつ、つるつるとして喉ごしがよい軟らかな麺。クセになるその麺のおかげで、あっさりと完食してしまう。箸休めの梅肉と大根のあえ物は、そばを完食後につまんだ。

あばあが食べていたぜんざいも、つられて注文。

 そして、私の悪い癖が。今から沖縄そばをはしごするのに、おばあにつられて、ぜんざいを頼んでしまっていた。私の完食の頃合いを見計らって運ばれてくるぜんざいの、このタイミングったら。気遣い上手のおばあたちが、こぞってやってくるのもわかる気がした。豆の茹で加減の絶妙さに心を奪われつつ、氷を掘っていくと白玉が現れた。「おなかが膨れても構わないさ」と口に運ぶ。硬さも大きさも、つるつるした食感も全て完璧で、総菜やそばだけでは飽き足らず、ぜんざいまでこんなにおいしいのかと感心しまくって完食。

店員さんの声援、励みになるよね

 お会計で店主さんに尋ねると、出汁は鶏と豚骨とかつおのミックス、ただならぬ麺は照喜名製麺だと教えてくれた。「これがあの照喜名製麺か」とそばを16杯食べたなりにほほうとうなずく。「がんばってるね」と、店主さんに送り出される。

 このスタンプラリーが終わったら、次はおばあとおばあの間に座り、定食を食べたいと心に決めている。食べたいものも戻る場所も、始める前より増え続けていることに気づかないふりをずっとしている。

〈筆者・たまきのそばデータ〉
・店名:亜砂呂(那覇市松尾2-9-7、電話098-861-8752)
・メニュー:沖縄そば300円、ぜんざい210円(量は正午に弁当を食べたたまきが、そばだけではなくぜんざいまで完食して少し満足なサイズ)
・雰囲気:席はテーブルとカウンター席がある。午後3時過ぎに行くと、ぜんざいを食べているおばあに出会える確率も高い。おひとりさまが苦手な人は、道路に面している総菜コーナー側から店内をのぞいてみるのも有り。