安倍晋三首相が日本の首相で初めて、米連邦議会の上下両院合同会議で演説した。

 「希望の同盟へ」と題した演説には、二つの特徴がある。一つは、米国に対する、まるで属国のような追従姿勢であり、もう一つは中国に対するむき出しの対抗意識だ。

 演説で安倍首相は、自衛隊と米軍の協力関係強化に触れ、集団的自衛権行使を可能とする安保関連法案を「この夏までに、成就させます」と宣言した。自衛隊の国際平和活動に言及した際も「法案の成立を、この夏までに、必ず実現します」と繰り返した。

 いまだ自国で国会提出すらしていない法案を、夏までに成立する、と外国の議会で約束したのである。

 米国の「リバランス(アジア重視戦略)」への支持も示したが、わざわざ「徹頭徹尾支持する」と明言している。何があっても口をはさまず受け入れます、ということなのか。

 続くくだりも気になる。首相は、日本がオーストラリアやインドと戦略的な関係を深め、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国や韓国と多面にわたる協力を深める考えを示した。日米同盟を基軸にこれらの国々が加わることで「私たちの地域は格段に安定します」と言い切った。南シナ海などで攻勢を強める中国を念頭に置いているのは明らかだ。

 環太平洋連携協定(TPP)交渉に触れた部分でも、日米のリーダーシップを強調して中国をけん制している。

 安保でも経済でも、中国への対抗心ばかりが前面に表れた。だが、本来まず語るべきは、東アジア全体の望ましい将来像ではなかったか。

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 戦後70年談話とのつながりで注目された歴史認識については、明確さを欠いた。

 首相は、米国の戦没者を悼んだ後、先の大戦に「痛切な反省」を示し、「アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない」と述べた。一方で、1995年の村山富市首相談話が明記した「植民地支配」「侵略」「おわび」との言葉は使っていない。

 首相は今回、英語で演説し、「痛切な反省」を「deep remorse」と表した。強い自責の念を意味し、謝罪のニュアンスを感じさせる言葉だという。これまでの言動から、米国内には首相を「歴史修正主義者」と見る声がある。その懸念に配慮した表現だと言えよう。

 だが、「侵略」や「おわび」を使わなかったことで、アジア諸国にどのような苦しみを与えたのかは分かりにくい。

 同盟強化のためなら自責の念を強調するが、アジアへの配慮は最低限で構わない、と考えているのであれば、首相の歴史認識は極めて危うい。

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 今回の首相の訪米で浮き彫りになったのは、日米の軍事的な連携を重んじ、強行しようとする政権の姿勢だ。

 しかし、共同通信社の全国世論調査で、両政府が合意した新たな防衛協力指針(ガイドライン)に47・9%が反対と答えた。賛成を10ポイント以上、上回ったように国民には慎重姿勢が強い。首相の国会軽視に対し、野党は怒りをもって徹底的に追及すべきだ。