最も進行度の高いがんの摘出手術を乗り越えた写真家の石川真生さん(64)の創作写真展「大琉球写真絵巻パート1~4」が5日、那覇市民ギャラリーで始まった。ユーモアを交え、琉球王国時代からの沖縄の姿を表現した絵巻は全長120メートル。「もし私に何かあっても大丈夫なように」と、最新作の「パート4」は、7月の手術当日の午前5時までかけて完成させた。最悪の事態を覚悟しつつ「沖縄人のプライド」を詰め込んだ全89枚の作品だ。

「醜いところも美しいところも両方あるのが人間だよ。どっちかだけ見て判断するのは嫌い」と語る石川真生さん=5日、那覇市民ギャラリー

 10日まで。入場無料。期間中は毎日、午後2時からギャラリートークに立つ。

 5日、用意していた車椅子を使わず、トークに臨んだ石川さん。「日本はアメリカのポチ。単純明瞭でしょ」。言及したのは、米軍キャンプ・シュワブの砂浜でトランプ米大統領に扮(ふん)した人が安倍晋三首相役に首輪を付けて従わせる創作写真。名護市辺野古に新基地を造ろうとする日米両政府に「しにワジワジーして、沖縄人として反撃したかった。写真家だから写真でね」。

 1996年から辺野古に通い「基地に賛成か反対かに関係なく、住民だから」とレンズを向けた。「米兵は愛し、米軍は大嫌い」主義。「一人一人はよく見れば人間。憎むべきは時の政治だよ」と言い切る。

 信念が貫かれた展示作品の中でも、沖縄戦中の殺人やレイプの場面は、徹底的に史実にこだわった上で自身の強い思いを表現した。

 写真には、戦後の混乱期に笑いで人々を励ました故・小那覇舞天さんも登場する。「最も沖縄らしい存在。悲惨な時こそ笑っていかないと」。手術の傷口が完治していない中、約1時間半ぶっ通しで立ち、撮影秘話を話した。

 涙ぐんでいた豊見城市出身の川上道子さん(43)=福岡県=は「写真に石川さんの気持ちを強く感じた。沖縄の歴史は小4の副読本くらいであまり知らないが、改めて向き合う機会になる」と語った。

「醜いところも美しいところも両方あるのが人間だよ。どっちかだけ見て判断するのは嫌い」と語る石川真生さん=5日、那覇市民ギャラリー