だいぶ前になるが、日本国憲法の成り立ちを知ろうといくつかの本を読んだ。その1冊に戦後、内務省(当時)の法制局長官で憲法立案責任者の入江俊郎氏が成立の経緯を記した原稿が紹介されていた

▼憲法公布日を1946年11月3日、施行日を47年5月3日とした理由を述懐している。「結局施行日が5月1日も5月5日も適当でないということになれば、5月3日として、公布は自然11月3日となるという方針がきめられた」

▼施行日に1日と5日が回避されたわけが興味深い。いわく、1日はメーデーだから。5日は端午の節句で覚えやすいが、男子の節句で武士をまつる意味があるため、男女平等と戦争放棄をうたう新憲法にはふさわしくないという

▼当時の人々の憲法への思いがうかがえるエピソードだ。明治にできた大日本帝国憲法と、戦後の日本国憲法の決定的な違いも示している。つまり前者に男女平等と戦争放棄の理念は無く、両理念は一対だ

▼改憲論議がかまびすしいが、現在の憲法がなぜできたのか、その中に何がうたわれているかを知らなければ、どんな議論もむなしい。憲法は国民が公権力を監視する手段とすれば、少なくともそれを知るのは国民の責務だろう

▼公布・施行から約69年、最近は分かりやすく解説した絵本もある。今日の日に一読を勧めたい。(黒島美奈子)