核・ミサイル開発を巡る北朝鮮の暴走は、米朝対立をエスカレートさせているだけでなく、韓国や日本の防衛強化の動きを表面化させている。

 韓国の宋永武国防相は国会で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長ら首脳部の暗殺を目的とした特殊部隊「斬首作戦部隊」を12月に創設する方針を打ち出した。

 文在寅大統領は就任当初、北朝鮮に対話を呼び掛け、融和的な姿勢を維持していた。「斬首作戦部隊」の創設は、対話路線とは百八十度異なる究極の荒療治だ。

 韓国国内では米軍の戦術核の再配備や、自前の核武装を求める声も政界の一部に出始めているという。

 防衛力の増強を求める声は日本国内でも急速に高まっている。

 衆院外務委員会、参院外交防衛委員会の閉会中審査では、「非核三原則」の見直し論議を促す意見や、敵基地攻撃能力の保有を主張する強硬意見が出た。

 自民党の石破茂元幹事長もテレビ番組で、米軍核兵器の持ち込みについて、その是非を改めて議論すべきだとの考えを示した。

 防衛省は2018年度防衛予算として過去最大の5兆2551億円を概算要求した。 弾道ミサイル防衛(BMD)の目玉と位置づけられているのが、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の設計費である。

 「高速滑空弾」や「新対艦誘導弾」などの新たなミサイル兵器の研究費も、「島しょ防衛用」という名の下に要求されている。

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 日韓だけではない。南シナ海、東シナ海で海洋進出を強める中国の2017年度(1~12月)国防費は前年度実績費で7%増え、初めて1兆元(約16兆5千億円)を超えた。

 トランプ政権も対中戦略を念頭に国防費の増額方針を打ち出している。

 軍縮に逆行する軍拡の動きが東アジアで進んでいるのである。背景にあるのは各国の不安の高まりだ。

 防衛力の増強は、安全に対する国民の懸念や不安が高まっている時に、抑止力強化の名の下に実施されることが多い。危機に際して国民は何よりも安全を重視する。

 軍備強化を実現する最もてっとり早い方法は、敵を名指しし、国民の不安をあおること、である。だが、その政策は目的とは逆の結果を招くことが多い。

 自国の安全を高めるための防衛力増強や同盟強化が、他国の軍拡を招き、結果として緊張を高めてしまうおそれがあるからだ。

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 東アジアは今や、完全に安全保障のジレンマに陥っているようにみえる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発問題を巡る現在の手詰まり状態から抜け出すのは容易なことではないが、戦争に訴えることは選択としてあり得ない。米国による限定的な軍事行動にも広範な反撃を受けるリスクが伴う以上、日米韓中ロが協調して「圧力と対話」を重ね、米朝対話の糸口を見いだす以外にない。

 危機は機会でもある。危機を転換の時とすべきだ。