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  • ネットで流布する「子宝スポット」。そんないわれはないと地元困惑
  • 金武町の寺は境内の石が赤ん坊にそっくりと報道され誤解が拡散
  • 御嶽などの聖域も多く、参拝客が殺到し立入禁止になった場所も

 「子宝に恵まれる」とウェブサイトなどで紹介された沖縄県内の寺や拝所が、「根拠はない」と打ち消す事態が起きている。パワースポット巡りの人気や、不妊に悩む人たちの増加を背景に、本来の信仰や言い伝えとは違ううわさが広まっているようだ。地域にとっては「聖域」である場所が多く、立ち入り禁止となるなど摩擦も生まれている。(社会部・伊藤和行、北部報道部・城間陽介、山田優介)

「子宝観音」と宣伝された金峯山観音寺は「そのような信仰は存在しません」と打ち消す張り紙を出している=金武町金武

観光客が増えたことで、神聖な御嶽が荒らされるようになったので区が設置した門=8月24日、今帰仁村古宇利島・ハマンシヌ御嶽

「子宝観音」と宣伝された金峯山観音寺は「そのような信仰は存在しません」と打ち消す張り紙を出している=金武町金武 観光客が増えたことで、神聖な御嶽が荒らされるようになったので区が設置した門=8月24日、今帰仁村古宇利島・ハマンシヌ御嶽

 金武町の金峯山観音寺の元山善弘住職(43)はうんざり顔で言った。「不妊治療情報サイト」などといったウェブサイトやブログで「子宝観音」として取り上げられ、祈願に来る参拝客が後を絶たないためだ。「子宝の信仰は一切ないのに…」

 始まりは約10年前のテレビ報道だった。境内にある鍾乳洞内の石の一つが「赤ちゃんの寝姿に似ている」などと報じられ火が付いた。元山住職は本堂に「そのような縁起・逸話・信仰はない」と張り紙をして打ち消しているが、今でも複数のサイトで紹介されている。「不妊に悩む人の思いは切実。間違ったうわさを広めないでほしい」

 南城市の斎場御嶽も同様のサイトで「子宝スポット」と紹介されている。同御嶽でガイドをするアマミキヨ浪漫の会の石田英明会長(70)は「そういういわれはない」と断言する。御嶽はそもそも、地域の人々が神に祈り、地域の繁栄や豊作、無病息災などを願う場所。「家族の幸せという意味では間違いではないが、子宝祈願のような限定的なお願いをする場所では本来ない」と言う。 

 参拝客が殺到し、立ち入りを禁止する場所も出ている。今帰仁村の古宇利島にあるハマンシヌ御嶽は、2006年に同島を秋篠宮さまが訪れ、その直後に紀子さまが妊娠したため、「ご夫妻が子宝祈願をした場所」といわれるようになった。しかし御嶽に詳しい関係者は「皇族が子宝祈願を公言するとは思えない。後付けだろう」と指摘する。区長の宮城博政さん(49)によると、御嶽で写真撮影やごみのポイ捨てが増え、数年前から通路に門を立て、案内板は撤去している。

 7月から立ち入り禁止となった本部町の「備瀬のワルミ」。崖の割れ目の間にある高さ約1・5メートルの岩の突起部に触れると子宝に恵まれる、と口コミで広まっている。地元住民によると、20年ほど前に不妊に悩む人のためにここで祈った地元女性がおり、最近まで別の女性(52)が祈願をしていたという。この女性は「なんとかしてあげたい一心だったが、今は騒がしくなったので祈る気持ちはなくなっている」と話した。

地域の神拝む場

 沖縄の伝統文化に詳しい作家の比嘉淳子さんの話 御嶽など沖縄の拝所の多くは、地域の人たちが普段から自分たちの神様がいる場所として拝み大切にしている。地域の守り神として信仰している人が多く「子宝の神様」などとカテゴリーに分けることは本来ない。パワースポット人気を受け地元住民や観光業界が、観光客誘致のために言い始めた場所が多いと思う。

 立ち入り禁止などの措置をとる地元の気持ちは理解できる。聖地が荒らされることを恐れてのことだろう。入り口に柵を立てること自体、神様に失礼だと後ろめたい思いでいるはずだ。

 インターネットが普及し、今後も新たな「スポット」として紹介される場所は出てくるだろう。参拝客は安易な気持ちで行かないでほしい。受け入れ側も礼節をわきまえない人がいれば厳しく注意するような態勢を整える必要がある。