沖縄科学技術大学院大学(OIST)のニコラス・ラスカム教授と、同大学研究員のフィリップ・タヴァレス-カデットゥ博士ら日本と英国の研究グループが、遺伝子の主要部位「プロモーター」間の相互作用を、遺伝の全情報であるゲノム規模で初めて突き止め、100万例以上の相互作用を記載した新たなリストを作成した。研究成果が5日、英科学誌のネイチャー・ジェネクティクス誌オンライン版に掲載された。研究グループは相互作用に着目した結果、難病のクローン病など炎症性腸疾患に関与する遺伝子の特定に成功、その解明に道筋を開いた。

(左から)フィリップ・タヴァレス-カデットゥ博士、ニコラス・ラスカム教授(いずれもOIST提供)

 プロモーターは、遺伝子のタンパク質合成をつかさどる部位で各遺伝子に一つある。

 これまで、プロモーター間や、遺伝子のほかの部位との相互作用を包括的にまとめたリストはあったが、遺伝子のどの部位と相互作用しているか遺伝子全体規模で、高解像度で解明されたことはなかった。

 研究では、遺伝子へ遺伝情報を伝える媒体役のDNAの標的部位を識別できる新技術を開発。プロモーターの相互作用を従来の67倍となる数十万例捉えた。プロモーターと離れた遺伝子の部位との間に生じる相互作用は2万2千例以上を確認。これまでは90例ほどしか見つかっておらず、飛躍的な成果を上げた。

 DNAの突然変異は、遺伝子から遠いところで発生することが多く、その影響を受ける遺伝子の特定が難しく、疾病との関連が明確ではなかった。今回、遠距離プロモーター相互作用に着目することで、炎症性腸疾患に関与する遺伝子の特定に成功した。

 従来確認されていた遠距離で遺伝子を制御する機能を働かせる「エンハンサー」に対し、抑える「サイレンサー」も発見した。

 今回の研究成果について、論文の筆頭共著者のタヴァレス-カデットゥ博士は「どのプロモーターと相互作用としているのか分かるので、実際の生命現象に大きく近づける」と指摘。

 ラスカム教授は「遺伝子疾患は遺伝子の制御と関連しており、その理解が深まれば、疾病に対する理解も深まる」と今後の疾患の解明に期待した。