認知症患者さんが増えていることは、ご存じの通りだと思います。そして、認知症が次第に進行すると、全身のさまざまな問題も重なって、食事がとれなくなっていくことがあります。

 食事がとれなくなっていくケースには、いろいろな原因が重なっていることも多く、食欲の改善が困難なこともあります。

 食事をとらなければ栄養失調となり、死期を早めてしまいますので、そのような状態になったら、担当の医師から「胃ろう」について説明され、家族に「胃ろう」を造る判断を求められる事があります。

 「胃ろう」についてごく簡単にお話すると、おなかに穴を開けて、胃にチューブをさし込み、口からではなくチューブを通して直接食事や水分を流し込んで、栄養補給を行うことを指します。

 介護や延命の面から、多くの「胃ろう」は実施されます。最近では、「胃ろう」を造ることに反対の意見も多くなりました。医師の間でも、「胃ろう」を安易に造るべきではないとする意見も増えています。

 一方、「胃ろう」により単なる延命だけでなく、より良い終末期に貢献するケースもあります。

 当院には認知症治療病棟があり、最重症の患者さんが、次第に食事がとれなくなってゆくことも、しばしばあります。そんな時に、ご家族と「胃ろう」を造るべきか相談しますが、「胃ろう」を造ることに反対されるご家族もいらっしゃいます。

 「胃ろう」を造る事は、正しいとか、間違っているとか、単純に割り切れるものではないと思います。「胃ろう」の造設を考慮する場合、患者さんの意志が確認できる場合はほとんどありませんので、ご家族の意志を確認させて頂きます。

 例えば「食事と水分を流し込まれて、ただ生かされてるだけの状態は残酷」とお考えになって「胃ろう」に否定的なお考えのご家族もいらっしゃいます。また「できるだけ生き続けてほしい」と「胃ろう」に前向きな考えのご家族もいらっしゃいます。

 どちらが正しいとも、間違っているとも言えません。ご家族の死生観や価値観は尊重されるべきものです。

 担当医は最終的にはご家族の意志を尊重しますので、「胃ろう」の造設が難しいなどの特別な理由がなければ、ご家族の希望に沿った「胃ろう」についての方針を立てるはずです。

 ただし今後どのような経過が予想されるか、代わりの治療法があるか等については、担当医とよく相談して、ご判断下さい。(川崎俊彦 宮里病院)