沖縄本島を縦貫する鉄軌道の導入に向けて県は関係委員会の論議を本格化させる。軌道を敷設した場合の起点と終点、大まかなルートなど計画案を2015年度末にまとめる予定だ。

 導入の必要性も含めてまだ構想レベルだが、構想を具体化し、鉄軌道の骨格になるルートを固め、どう事業化につなぐのか。事業の基礎を検討する極めて重要な論議の過程になる。県は各論議の段階で県民の意見に耳を傾けるパブリック・インボルブメント(PI)を小まめに実施する方針で、鉄軌道構想の具体化に向け広く県民的議論に発展することを期待したい。

 12年度の県総合交通体系基本計画には「那覇から名護まで1時間、那覇-普天間-沖縄市は30分圏内」という考え方が盛り込まれている。鉄軌道を本島内の公共交通システムの幹線に位置付けたイメージで、幹線からどう県全域に公共交通サービス網を張り、利便性を高めるのかといった視点が特徴だ。

 もちろん、名護以北や那覇以南の地域に鉄軌道の拠点を設ける議論があってもいい。鉄軌道の拠点とバスやLRT(軌道系交通システム)を結び付け、どう地域を活性化させるか。こうした考え方も重要となってくる。

 鉄軌道の導入は、地域づくりや日頃の生活に深く関わることから県は10日から1カ月間、県内全世帯に議論の経過を知らせ、意見を求める。

 ほか市町村の役所、役場でパネル展を開き、意見交換会、県民会議なども開き、県全体で議論を盛り上げる考えだ。

    ■    ■

 ルート案が予定通り決まれば県は16年度以降、事業化に向けて検討に入る手順を描く。「新幹線整備法」を参考に官民で整備を分担し、県の負担も軽くする特例制度の導入のほか、整備・営業主体の選定、環境影響評価など開業に向けたハードルは高い。

 特例制度では国民の税金投入を前提にするため、国や県、関係市町村間で公益性や平等性の議論も想定される。事業主体が民間の場合、官民の役割分担も重要だ。

 沖縄都市モノレールが初期投資で多額の債務を抱え、業績が好調にもかかわらず債務超過の状態が続く現状を考えると、開業に向けた事業設計も重視されるべきだ。

 利用者の需要や収支計画など事業全般の見通しを誤り、採算が取れなければ、利用者の運賃に跳ね返る可能性があるからだ。自動車に頼らなくても、安価で移動が可能な公共交通の使命を果たす視点は忘れてはならない。

    ■    ■

 昨年末、名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志知事の誕生を受け、政府内で鉄軌道構想を「白紙化」させる声が上がった。基地と振興のあからさまなリンク論で、基地負担と沖縄振興を取引させるような対応は断じて許し難い。

 沖縄にとって鉄軌道の導入は、沖縄戦で破壊された軽便鉄道の復活であり、不発弾処理や遺骨収集と同様、国の戦後処理の一環と捉える声もある。旧国鉄の恩恵も受けていない沖縄に、国の英知を集めて支援するべきだ。