◆沖縄そば29杯完食を目指す物語です。

 前回(1~3杯4~6杯7~10杯10~15杯15~20杯)の続きです。

 那覇市のまちぐゎー案内所・ゆっくると飲食店のコラボ企画「沖縄そばスタンプラリー」に挑戦し、沖縄そばじょーぐーを目指し、はしごそばを繰り返す猛ダッシュです。

◆違和感なくなってきたよ、「はしごそば」

 8月5回目のはしごそばの翌日の27日。そろそろ夏休みも終わりだが、沖縄はまだまだ暑く、私は相も変わらず汗だくで29杯のそばの旅路を歩んでいる。孤高の旅と言えば響きはいいが、旅路を楽しむ余裕はまったくない。公設市場を中心に、せわしなくそばをすすってはその付近を歩き回る日々。

 そんな私は「最近毎日飲み会でさー」と似たようなニュアンスで今日も言う、あのせりふを。

 「最近連日、はしごそばでさー♪」

 同僚に「ばかじゃないの?」と冷ややかな目で見られても、今日もあなたの期待を裏切らず「はしごそば」。信じたくないけど今月6回目で、つらいと思うこともなくなりつつある。

「人間は環境に適応していく生き物なのだ。きっと・・・」と涼しい顔で考えつつ、本日1杯目のそばを目指す。

【21杯目】夕暮れムードで軟らかい三枚肉を…「やしの木広場」

300円の文字が踊る「やしの木広場」

 21杯目は、平和通りにある「やしの木広場」。この旅で初めて半地下となる店内。外でメニューを眺めると、「おいしくて 300円」という蛍光色の掲示物が目に入る。その周りをメニュー写真が彩り、通る人を手招いているように見える。料理がすべて300円なのかと思いきや、酒類と一部の料理が300円で、定食は該当していないようだ。

 どちらにしろ、私にはメニューを選ぶ権利はない。そばwith別メニューは許されても、そばを省くことなど言語道断だ。

 「わかっていますよ」とつぶやき、暖色系の照明で夕暮れのようなムードの店内へ足を踏み入れる。午後3時を過ぎており、客は私ひとりだけ。セルフサービスの水を入れて座り、沖縄そば小を頼む。なんだか一連のしぐさがおじさんくさいなあと思った途端に、周りの空気に哀愁が漂う。

軟らか~いの三枚肉、いいですよね

 もはやおじさんの私の元へ、おねいさんが小さなそばを運んできた。心と胃の負担を気遣うかのような優しさでできた小ぶりのそばは、豚骨ベースと思われる出汁にしょうゆが入っているような色合いで少し味が濃い。そばを覆う三枚肉とかまぼこも心なしか小ぶりちゃん。軟らかい三枚肉のおかげで食欲が増し、量に物足りなさを感じ厨房に向かって「おかわりっ!」とお願いしたいが、はしごだったことを思い出しぐっと堪え、ゆっくる新聞を広げる。

 思えば遠くへきたものだ、中原中也の名言が心に響く。ここまで20店練り歩いてきたものの、店が変われば沖縄そばの味も個性も違い、それぞれが初めての出合いとなった。今までこれほどそばに向き合って食べたことがなかった。

お水はセルフサービスで。

 「お昼はそばにするか・・・」と食べに行っても、食感や盛り付けられたその姿、麺や出汁について興味を持つこともなく、ただ「食べた」だけだった。それが何ということでしょう。店の外観から始まり、店員さんと触れ合い出汁や麺について関心を持つようになった。ひとつのものごとをやり遂げる過程で、必ず人は何かを手にするのだ、きっと。とかなんとかひとり熱いそば談義を心で繰り広げ、スープを飲み干し完食した。

 「もう少し何か食べたい」と拡張工事を終えて大部屋になった胃が、一生のお願いを繰り返すが、とりあえず無視して、レジへと足を進める。このころから、スタンプをお願いしてゆっくる新聞を広げると、お店の方が「すごーい」と反応してくれるようになる。

 「そうでしょ、そうでしょ。ついに3段目(21杯目以降)まできたんだよ、私」と心の中でつぶやきながら、鼻の穴を膨らませて得意げな顔で言う。「29杯食べきって、女で初の認定証をこの手でつかむんです!」と。私の熱が熱すぎたのか、店のおねいさんは「そうなんですね、がんばってください」と半ば引き気味の笑顔で、お釣りを渡してくれた。

 いいんだもん、私は私の道を行くんだ、と夕暮れの店内を背に地上へ再び舞い戻り、次なるターゲットがある公設市場ゾーンに焦点を合わせた。

〈筆者・たまきのそばデータ〉
・店名:やしの木広場(那覇市牧志3-1-22、電話090-4470-7891)
・メニュー:沖縄そば小300円(バイトが休みで朝から何も食べていないたまきが5分で完食した揚げ句、次のそばの前にタコライスも入っちゃうであろうサイズ)
・雰囲気:平和通り沿いの屋外席と半地下の店内。階段を下りて正面にはテーブル席が広がり、左側にカウンターがある。水はセルフサービス。夕暮れ色の照明も手伝っておひとりさまでも入りやすい。