中谷元・防衛相が就任後初めて沖縄を訪れ、翁長雄志知事と会談した。中谷氏が力説したのは、中国に対抗するための「沖縄要塞(ようさい)化計画」と呼ぶしかない基地強化策だった。

 中谷氏は報道陣に公開された発言のかなりの時間を割いて、海洋進出を強める中国の脅威と、島嶼(とうしょ)防衛について話している。

 中国の活動が活発化する中、自衛隊機の緊急発進(スクランブル)が5年間で5倍近くに増えていること、中国が東シナ海上空に防空識別圏を設けたため緊張感が高まっていること、尖閣諸島国有化後、領海侵入が激増していること、などを得々と説明した。

 さらに中谷氏は、陸上自衛隊沿岸監視部隊を与那国島に、警備部隊を宮古島市に配備する計画や、航空自衛隊那覇基地のF15戦闘機部隊を2個飛行隊にするなどの自衛隊増強策にも言及した。

 普天間飛行場の辺野古移設に関しては、抑止力の維持と危険性の除去を繰り返し、「どう考えても、唯一の解決策と確信している」と強調した。

 カメラの前で中国の脅威を訴えれば、世論を引き付けることができるという思惑があったのだろう。

 普天間問題の原点は基地の過重負担の解消である。しかし会談で明らかになったのは、米軍と自衛隊の一体化によって沖縄の軍事負担が増すという真逆の方向性だ。

 普天間問題は1996年の返還合意時とは似ても似つかぬような「沖縄要塞化計画」に変質してしまった。これは看過できない重大な変化だ。

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 少し前まで中谷氏は、新基地建設に反対する知事とは「会っても意味がない」という冷淡な態度だった。それが一転、対話に応じたのは、菅義偉官房長官や安倍晋三首相の時と同様、移設を強行する政権への批判と米国の視線を気にしてのことであろう。

 翁長氏から沖縄の民意を聞いた直後の日米首脳会談で安倍首相は、知事が辺野古移設に反対していることは伝えたものの、それを打ち消すように「辺野古移設を唯一の解決策とする立場は揺るぎない」と発言している。選挙で示された民意に寄り添う姿勢は全く見られない。

 中谷氏は中谷氏で知事に会う前日に移設先の区長らと面談し振興策の話をしている。

 翁長氏が中谷氏を「高飛車」と批判したのは、辺野古以外の選択肢を本気になって見つける努力もせず、沖縄の反対を押さえつけようとする態度に我慢がならなかったからだ。

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 今回の会談で翁長氏は、2年前に国会議員と意見交換した際「本土が嫌だと言っているんだから、沖縄が受け入れるのは当たり前だろう」と言った自民党議員の話を持ち出し、安保の負担を押し付ける本土側を痛烈に批判した。

 翁長氏は中谷氏へ「品格ある日米同盟であってほしい」とも求めたが、日米同盟は沖縄の犠牲を当然の前提にするような「品格なき同盟」に成り下がっている。

 米軍基地の建設は地元の合意が大前提である。それが民主国家の最低限のルールだ。